8月29日 深川を行く:その16「深川資料館」
「深川を散策するご報告の続きでございます」
「深川へ来たら、ぜひここも見ておきたい」
「はい、深川資料館です」「江戸の町が再現されている」
「見応えがありますね」「ここは八百屋じゃな。こういう店も深川にはあった」
「には……って、他にはないんですか」
「野菜などは棒手振り(ぼてふり)といって、売り歩くのが普通。魚でも野菜でも、店に買いに行くことはない」
「でも、八百屋お七っていますね」
「そう。あれは八百屋という屋号の小間物屋」
「小間物って、櫛や簪(かんざし)を売ってる店ですね」
「そうじゃ。有名な漫画家にお七の情念を描いた作品があるが、店先に野菜があって吹き出したことがある」
「マンガにはよくあることで」「こちらは川端」
「はい。出店が見られますね」「屋台の天麩羅屋」
「こんな形で売っていたんですか」
「一串8文くらいじゃろうか……ファーストフードだったのじゃ。江戸の人は職人が多く、満腹では仕事にならない。小食で一日4,5回の食事をした」
「それでこういうお店が発達したんですね」「こちらは二八そば」
「よく落語にも登場しますね」
「このころのお店を調べると、どうやらかけ算で16文というのが正解らしい」
「そうですか」「はい、中にある芭蕉の句碑」
「ここにもあるんですね」
「お馴染み『古池や蛙飛び込む水の音』の句が彫られている」
「ここではいくつか碑があるようです」「はい、川を見下ろして、ここはおしまい」
「急ぎ足の見学に見えますが、ゆっくり歩いてもさほどの時間は掛かりません」