8月29日 深川を行く:その15「採陀庵」

深川を散策するご報告の続きでございます」
「今日は採陀庵(さいだあん)ということですが……これは」
松尾芭蕉の『奥の細道』の冒頭、旅立つことを決意した芭蕉はひとまず住んでいる家を人に譲って弟子の杉風の別宅へ移った。この『住んでいる家』というのが芭蕉庵、『杉風の別宅』が採陀庵なのじゃ」
「へえ」
「今は家は残っておらず、この辺りだよってんで、旅立ちの人形が展示されているだけ」
「ここが本当の出発なんですね」
「現実にはここへ移った時に『草の戸も住みかはる世ぞ雛の家』を読んでいる。わしの研究では、現実にはそうでも『奥の細道』では、この採陀庵から旅立つ時の句として解釈すべきという……」
「何か根拠があるんですか」
「杉風が手紙で読んだ句に『花の陰わが草の戸を旅枕』とあるのじゃ。つまり採陀庵が草の戸であり、ここから旅は始まったということになる。現実だけを見ると『草の戸』は芭蕉庵じゃが、『奥の細道』は芸術的な文章じゃから、そういう構成があるのじゃ」
「はい、面倒な話は置いといて……」

「川に沿って芭蕉の句が紹介されている。わしは先にこちらへ回ったが、深川資料館を先に見て、この川に沿って戻るのがお勧めかな」
「はい、先へ参りましょう」

「これは近所のお店で売っている『芭蕉庵』という最中。家の形がおしゃれじゃな」
「お土産にどうぞ」
「こうして深川資料館へ参ります」

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