6月2日 水戸を行く:その8 曝井
「「さて、保和苑周辺のロマンチックゾーン、その最後は曝井(さらしい)」
「井戸ですか」
「万葉集に、
三栗の那賀に向へる曝井の絶えず通はむそこに妻もか
という歌がある。三栗の那賀というのは地名じゃ。そこに向かう曝井が絶えることなく流れているように、私はそこにいる妻の元へ絶えることなく通おう……てなことじゃ」
「それがこの当たりなんでしょうか」
「この歌は高橋虫麻呂の咲くという説もあり、『常陸国風土記』に那賀郡の項に紹介されていて、夏になると女性達が布を洗って曝したと説明されている」「流れを生かした小さな公園になっていて、石碑がいくつか立っている」
「いい風情ですね」
「そうじゃなあ……」
「また、何か引っ掛かっていますね」
「うん。手入れも掃除もしていない。折角の石碑の紹介看板も苔生していて……せっかくロマンチックゾーンとしながら、これはないじゃろう」
「残念ですね」「こちらも先ほどの万葉集の歌が刻まれている」
「はい。どんどん説明が手抜きになります」「さて、ここは竹林が広がり、これを見て散歩してもいいな」
「自然にも親しむということですね」「ということで、竹をご紹介して、曝井のご紹介を終わります」
「これで水戸のシリーズは無事完結……」
「いや、もう少し続くぞ」
「あらら」