12月6日 池袋〜師走笑わす二ツ目噺

「さて、若手の勉強会でございます」
「はい、こちらも毎年行われていますね」
「5回目。人気がなければ今回が最終回」
「また……」
「この会は落語芸術協会の若手4人でやってきた。全員が交替でトリをつとめたのじゃ」
「あれ、4人ですか。今回5回目でしょ。二巡目になるんですか」
 「残念。今回は何と、いつも助演している、漫才の陽・昇がトリということになった……写真右」
「あらら……落語じゃないんだ」
「そういうこと」
「じゃあ、参りましょう」
「開口一番、桂翔丸で『雑俳』。柳昇の形じゃな。あの飄々とした雰囲気は出せないから、落語によるあるご隠居と江戸ッ子という組み合わせで演じている。形にはなりそうじゃな」
「はい、これからこれから……春雨や雷太
「マクラが良かった」
「それは失礼な」
「それで客の気持ちをつかむのじゃよ。出し物は『鈴ヶ森』。主人公の泥棒がおびえるおかしさが、よく描かれている」
笑福亭里光
「『一人酒盛』。色々言いながら飲むのが面白いのじゃが、一人で飲んでいることに違和感を感じさせない説得力がないとぶち壊しじゃ」
「また、難しいことを言って……」
「客は飲めない男を思いながら聞くのだからな。そうでなければちっとも面白くない」
「確かにね」
「とにかく、良かったということで……見事な仲トリじゃった」
「ということで、ここでお仲入り。食い付きは橘ノ圓満
「『火焔太鼓』。この人は古典を実に忠実に再現している」
「古い」
「いや、前座時代はそう思っていた。痴楽の『ラブレター』をほとんどそのまま演っていたが、時代錯誤も甚だしいってね……それが二ツ目になって取り上げる演目が実に生き生きしている。圓生そのままの『豊竹屋』は、音曲が本物だからいい。まあ、自分なりのものになって行くのじゃろうな……その他の演目は古典的でありながら個性が加わっていて、あれこんなに上手かったかなと再認識したという……」
「はいはい、説明が長い」
「今日のネタも、基本は志ん生じゃが、はっとするような新鮮味があったな」
「良かったんですね」
「ううん、オチも志ん生より前のものを再現させた。素晴らしい」
「はい、続いて桂夏丸
「もちろん、これがヒザになる」
「ヒザというのは、トリの前の色物です……ということは……」
「皆さん分かりますね……まずは『おすわどん』。再婚の導入、怪談めいたサスペンス、番頭さんの笑い、そして真相が解明されてからの面白さ……テンポもいいし、言うことなし」
「はい、お見事」
「で……ここから歌謡ショーの開始」
「あ……やっぱり」
「はい、先日の『品格』で歌った5曲メドレーでございました」
はいはい……トリへ生きましょうね。宮田陽・昇の漫才」
「今日のネタは師走のトリにふさわしい『芝浜』」
「え……それ、落語でしょ」
里光がトリにふさわしいネタをやれって言ったらしい。毒づいていたら、本人登場」
「こういう席ならでは」
「で、陽が『芝浜』のストーリーを語り、がずらす。『時蕎麦』やら何やら、他の落語ネタが次々と登場したぞ」
「訳の分からないおかしさですね」
「これが漫才じゃな。漫才のトリにも似合っているし、良かったなあ」
「……一つも今一がないですね」
「うん……二ツ目の会としてではなく、普通の寄席だとしてもかなりハイレベルだったと言えるんじゃないかな」
「はい、良かった良かった」
「ということで、ご報告を終わります」

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