国際ブックフェア

「さて、7月7日から11日まで行われていた国際ブックフェアIT教育フェスティバル
「毎年やっています」
「出版社やIT企業600社が新製品やら何やらを公開する。わしもこの夏、ITを使った学習キットの製作をするので、参考に……」
「本当は」
「全ての本が2割引きなので」
「やっぱそっちだね」
「まあ、東京へ行けば大概の本は5%引きで、近所の本屋で買うことがなくなっているのは申し訳ないが、それと比較しても安い」
「はいはい」
「それで落語関連8冊、小説や評論を4つ」
「合計12冊」
「定価13000円。実際支払ったのは1万と90円」
「2割引きより少ないですねえ」
「そう、古い本は半額になっている」
「本は重いでしょう」
「それが大変、しかも、帰りに他のイベントに参加するし……」
「しょうがないね」
「それで本を見るだけなら3時間もあれば……イベントなどもあって、結局丸6時間いた計算になる」
「すごいね」
「イベントでは当然サインなどもいただくので……」
「あ、読めて来たぞ……本だけに」
「「さて、国際ブックフェアの楽しみは、作家との話」
「今回もありましたか」
「このページでも読んだ本を紹介しているが、そこから色々紹介されて……文藝春秋社では真保裕一(しんぽゆういち)さんのサスペンス『追伸』、筑摩では山口智子さんの『名も知らぬ遠き島より』、河出では白岩玄さんの『野ブタをプロデュース』……ま、サイン本はそんなところで……」
「まだ読んでいないね」
「まだ4日じゃからなあ……とりあえず欲しい本はお金を出したので、そちらから読み始めている。今まだ3冊しか読んでいない」
「はいはい、頑張って読んでね」
「さて、イベントでは姜尚中(かんさんじゅん)さんとお話。最近読んだもので印象に残ったもの、それから自分の作品について……」
「小説を書いたというんですね」
「そう、母親をモデルにしたそうじゃ。母は文盲じゃが記憶力は素晴らしく、親戚の誕生日を尋ねられると、何年何月何日何時何分……」
「え、そこまで覚えている」
「字が書けたら色々書きたいとおっしゃていたそうじゃ」
「その母をモデルに」
「そう。やはり時代背景はすごいな。戦争を乗り越えた人間にはドラマがある。これはわしの父や母でも同じ……」
「ふうん、戦後生まれにはドラマはありませんかねえ」
「それはないじゃろう。やはり我々も時代の変化の中を生きている。さんの意見もそうじゃった。今度は会話だけで小説を書きたいそうじゃ」
「会話だけですか」
「仏典も聖書も、『論語』だって、偉い人がこんなことを言っていたという記録じゃろう。言葉から歴史は始まる。『古事記』も口述筆記じゃ」
「言葉には魂がこもっている」
「そう。言霊(ことだま)という」
「それを小説でやるのは新鮮ですね」
「まったくそれは落語ですねと言ったら笑っていた」
「本当だ」
「しかし手際の悪いのは出版社」
「どうしました」
「入場希望者を先にネットで受け付けたらしいが、千人の会場に、多くの方に聞いていただきたいってんで、四千二百人を受け付けた」
「え……入りませんよ」
「そう。椅子が一杯になって、『荷物は置かないで』って……誰も置いてない。それで慌てて椅子を出すのじゃが、客が座るのに椅子を取る。『危険ですからやめて下さい』って……分かっているんだからもっと早くやっておけよ」
「確かにね……でも、四千人も入らないでしょ」
「結局後の三千人は別室で、モニターをご覧下さいという……」
「最初からそう言っていたのならかまいませんがねえ」
「そう。わしだったら、帰っていたな」
「不手際ですねえ」
「それで、もちろん混乱をきたすというので、サイン会も中止」
「残念」
「わしはこっそりもらった」
「……あいかわらず、図々しい」
「その後、英語教育キットの宣伝にダニエル・カールさんがお出でになった」
「これは写真がありますね」
「英語教育と言ったが、普通の辞書の大きさで、太めのペンでなぞると発音してくれる」
「昔は大きなものしかなかったということですね」
「そうじゃ。これなら使えるね」
「で、お値段は」
「辞書が三千円、ペンは一万円……この会場での特別価格」
「高いなあ」
「ペンはどの本にも使えるので……」
「なるほど……」
「それでお買い上げの方にだけ、カールさんのサインを進呈」
「はい……あれ、大家さんは」
「わしは当然、お手伝いをしたので、買わなくてもいただける」
「またまた図々しい」
「そんな訳で、購入して読んだ本については、またご紹介いたします」
「はい、ブックフェアの報告は以上」

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