6月21日 12人のヴァイオリニスト演奏会

「さて、この日は博物館、美術館等の予定もあったのだが、大雨のため予定変更」
黒門亭の昼席に入っちゃったんですね」
「それが無事に終わって渋谷へ移動。先週紹介いただいた、12人のヴァイオリニストの演奏会」
「本当に忙しい」
「しかし、この演奏会が、前代未聞、今後もないだろうという最低最悪の演奏会じゃった」
「あらら……どうしたんです」
「まず、会場……この日は他のイベントも目白押し。同じビルの一つ下の階ではジャズの演奏会。そのトランペットとベース、ドラムスの音が筒抜け。これで静かな曲を演奏してもねえ……まず、それがぶちこわし」
「主催者が知らなかったんですか」
「そんなはずはないな……ドアを締め、エスカレーターを止めて封鎖すればいいことじゃ。それをお客様のためだからなどと言い訳をして、開けっ放しで演奏会をやるこの無神経さ」
「これでは演奏もおざなりになるのは仕方がないと思ったが、まあ一生懸命やっていたので、許す」
「……その言い方は……演奏の方でも何かあったんでしょう」
「メンバーのうち6人が登場し、ピアノが加わっての演奏。個性が面白い。CDでは各楽章のソロを交替で演奏し、12人が登場するのじゃが、演奏会では1つの曲の途中でソロが入れ替わって変化をもたらした」
「面白いですね」
「今回発売のCD、ヴィヴァルディユーミンの『四季』、他にアイネ・クライネ・ナハト・ムジークチゴイネルワイゼンを演奏した。CDはさっき述べた通り。残りの2曲が面白かった。フレーズ毎にソリストが代わって、二人で演奏するその組み合わせも代わって行くのは見物じゃな」
「じゃあ良かったんじゃないですか」
「それが、この日2人目の子のヴァイオリンが微妙に……半音のウン十分の1だけ弦が合っていない。天気のせいで大変だなのじゃろうが……」
「文句が多いんだから」
「名門といわれるクリーブランド・オーケストラでも、第2ヴァイオリンが音がそろっていない録音がずいぶんあるものねえ……」
「じゃあいいんじゃないですか」
「聞いていて引っ掛かる。まあ、そういう義理でサインはもらったが、素晴らしい演奏ではなかったから、写真撮影はカット」
「ひどいね」
「でも、1人目の力強い音色、3人目の美しい音色、6人目の説得力ある語り口……個性が光っているのだから、注目は続けていこう」
「はい。CDもお勧めですか」
「まあ、ヴィヴァルディ四季じゃから……個性を生かす演奏で、要するに統一感がない。一人のソリストで演奏し、全体を構成していくのと違うから、バラバラじゃ」
「じゃあ、あまりお勧め出来ませんね」
「いや、ヴィヴァルディ四季といえば、古今東西の名曲の中でも、最も詰まらないという作品じゃ」
「また……ファンが怒りますよ」
「事実は事実。その曲に新しい息吹を与えたと評価されるに至るかどうか……これも注目して行こう」
「もう一枚、ユーミンは」
「編曲のセンスが今一……まあ、分かるメロディをクラシックで演奏するパロディと思えば」
「はいはい……好き勝手なコメントですが、今後も注目する価値はあるということで……」
「はい、この後打上で、無事1日を終えました」

表紙へ戻る     黒門亭へ戻る

inserted by FC2 system