12月21日 浅草演芸ホール・昼席

「さて、そういう訳で……」
「どういう訳」
浅草演芸ホールへ」
「参りましたね」
「いやあ、まいりました」
「どういうこと」
「写真は表でのパフォーマンス。TXの駅との間にお寿司屋さんがオープンして、その宣伝をしていたものじゃ」
「寄席とは関係ない」
「さて、前座は神田あっぷる。今月2度目で、前回と同じ『鉢の木』のお話し」
「言い立ての練習というやつですね」
「前回より調子がいい。若い者はどんどん成長するのじゃな」
「はい、楽しみです」
「もう一人、瀧川鯉八の『牛ほめ』。テンポもいいが、抑揚にわざとらしさが残ったり、まだ課題が多い」
「さあ、顔付けに名前の載っている人ですね。まず、瀧川鯉太
「『善哉公社』、乗りがもう一つ。明るい調子がいいのじゃがなあ」
マグナム小林の代演で江戸家まねき猫
「動物物真似で『物真似通販』。鶏、犬、猫」
三遊亭遊馬
「『真田小僧』。嫌なガキだが、可愛くなくてはならぬ。上出来の作品じゃった。子供が逃げるのが落ち」
三遊亭遊之介の代演で桂歌若
「例によって嫁探しから『たらちね』。自然な流れじゃが、昇太と彼は何とかならないかな」
「落語の批評じゃないですね」
「将来が心配で」
小天華の代演で一矢
「写真をプレゼント。お馴染み相撲漫談
三遊亭圓丸
「『親子酒』、今月2度目。本人がそのつもりでないのに、いつの間にか酔っていたという雰囲気で見せる。ほとんどの演者が途中を省略してしまうので、妻が飲ませるのにも疑問を感じるのじゃが……寿輔は杯を重ね酔っていくのをきちんと見せる。この圓丸のやり方もなかなかいいな」
三笑亭笑遊の代演で三遊亭左圓馬
「『掛取』の『けんか』。いいな。分かっていたら土産を持参したのじゃが……実は夜席で土産がいくつか余ることになるのじゃが、この時には……申し訳ない」
「私的に使わないの。Wモアモア
「税金の使い方は説得力がある。面白いな」
三笑亭笑三
「お馴染みの『異母兄妹』。昔は『冬のソナタ』という題で演じていた。『冬ソナ』は消えてしまったのかな。ううん、『お父さん』に返事をしていいものか……」
瀧川鯉昇の代演で桂伸治
「『時蕎麦』。このところ何人も聴いたが、食べ方に違いを感じた。この違いをまたまとめてみよう」
「はい、檜山うめ吉の代演で鏡味健二郎
「今年ちょっと手元が危なく感じることがあったが、今日は大丈夫だった……かな」
「はい、仲トリは三遊亭遊三
「ひさしぶりに『ぱぴぷ』。まあ悪い訳がない」
「そういうことで仲入りですが」
「そう、ここでアクシデント。座席にノートを置いて楽屋へ挨拶に行くと、その間に座っているおっさんが……」
「あら」
「ノートが落ちたらしいが、椅子の前、足下に荷物が置いてあるのも気付かないのじゃろうか」
「そんなことあるんですね」
「いや……実はこういうことは浅草では当然……だからわしも文句をいわずに引き下がった」
「そうなんですか」
「ほら、ここは……ね」
「はっきりしませんね」
「要するにドサ金が来る席で、だから、実はここまで、落語の最中に喋ったり、携帯が鳴ったり、演じている人にとんちんかんな応対をして止めちゃったり……」
「そうなんですか」
「昼間はいつでもそんな調子。平日の夜は労務者が来て、これもおかしな雰囲気になる……今日は日曜日だから大丈夫と思うが……」
「さて、どうなりますやら……後半、食いつきは三遊亭遊史郎
「『転失気』。例によって子供の可愛らしさはもちろんじゃが、坊主に風格も出始めたのを感じたな。へ、お写真お持ちしました」
ナイツの代演で宮田章司
「お馴染みの売り声じゃ。ナイツは写真を用意したが、残念ながらM−1の方へ……これまた残念ながら優勝しなかったらしいな」
三笑亭可楽
「こちらも写真を……」
「私的な報告ばかりだね」
「『ちりとてちん』じゃ。若手の大袈裟な縁起ばかり見ていたが、さすがに大物の演じるところはひと味違う」
「『ちりとてちん』は夏の話でしょう」
「本来は……しかし、ちゃんと冬の季節感を出していた。若い者はすぐ汗だくになるから、冬の話として演出が出来ないじゃろう」
「そうですか」
「今日は冬にしては暖かいが、暖房とライトでほとんどの人が汗だくじゃった」
「ふうん……三遊亭小遊三の代演で三遊亭円雀
「『浮世床』で、将棋と夢を演ったらしい」
「……らしいって……」
「客席で倒れた人がいて、心臓マッサージをやっていたので、ちゃんと聴いていなかった」
「あらら、アクシデントですね……次はボンボンブラザーズのはずが、ここで松旭斎小天華が登場」
「つまり前半に出た一矢ボンブラの代演だったということかな……さて、倒れた方は意識も戻り、そこへ救急隊員が到着したので、わしと隊員で抱えてロビーの椅子に座らせたら、少し落ち着いたようで、わしもほっとして戻ると、もうトリが登場」
「トリは三遊亭春馬
「『猫の皿』を丁寧に……情景描写が見事。そこから猫の皿に目をつけ、作戦を練る目つき、好きでもない猫を無理に抱いて……親父が皿は譲れないと断言した途端に、猫を放り出して……それがいちいち筋が通っていて無理がない。いやあ、トリにふさわしい、見事な一席じゃった」
「はい、まあ、色々なアクシデントのある席でした」
「このまま夜席へ突入ですか」
「はい、これはまた次のページで」

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