12月7日 早朝寄席

「さて、今日は上野鈴本の早朝寄席
「はい、このページでもお馴染み、二ツ目の勉強会ですね」
「最近は客層が変わって、面白くなくても受けるようになったと愚痴っていた」
「そうでしたね」
「今日も開演前に、お馴染みの落語雑誌の関係者とお会いしてそんな話をしていたのじゃが……」
「どうでした」
「それでは順に振り返ってみよう」
「はい、最初(はな)は」
桂三木男
三木助の弟子ですか……もう少し前に亡くなっていますよね」
「先々代の孫、先代の甥なのじゃ。『転失気』を演じたが、少し説明がくどいなあ」
「まだまだですか」
「そうじゃな。それにやらたに『何々しちゃって』という言葉が出る」
「いけませんか」
「江戸言葉なら『しちまって』としてほしいな。5、6年前は、この会で聴いたことのない江戸言葉が出て来て感動したが、最近は逆に、この程度の言葉をなぜ……ってことがある」
「では、駄目ですか」
「いや、それが出るのは地の部分で、台詞ではないからまだ……ただ、後半になると勢いが完全に消えていた」
「尻つぼみですか」
「こなれていないのじゃろうな。まあしょうがない」
「しょうがないですか」
「うん……ここ数回のようなひどいものではないから、一応もう少し努力しろという拍手をした」
「我が儘な拍手だね。はい、次は」
桂笑生の『普段の袴』、いいテンポでトントンと進んだ。こういうのは聴いていて気持ちがいいな」
「良かったですね。続いては」
鈴々舎風車の『やかんなめ』。これもなかなかいい」
「今年ろべえ君が取り組みましたね」
風車も汗だくじゃ。ただ、少し慣れているのか、テンポがよかったな。逆にテンポがいいと、侍が当て推量で暴漢に襲われたとか仇に巡り会ったとか……その辺りが余計な時間に感じる」
「余計というと……」
「侍に頼む女中は一刻を争っている。そこが引っ掛かって来るのじゃ」
「テンポが良すぎると、それが気になるんですか」
「そうじゃな。少しのんびりやると、それも悪くないと思うのじゃが……」
「はい、トリですね」
柳亭こみちの『二番煎じ』」
こみちって……確か女性ですね」
「そう、円朝祭りでは愛と茂ってデュエットをやっていた」
「今日のネタは」
「旦那衆が夜回りをするという噺で、登場人物は男ばかり。それがそれぞれ個性的でないと面白くないから、その違いを出すのが大変な作品じゃ」
「どうでした」
「ううん……色々な工夫が見られたな。火の用心の声は大きくなければならないのに、多分女性の声ではいけないのじゃ。それで声を落として……とか……よく考えている」
「上々ですか」
「ちょっと単調になる感じがあったな。眠気を催してしまう。それから、最初の演者と同じ、『しちゃって』が出る。それも、人物の台詞で」
「普段使っているから出ちゃうんでしょうね」
「そうじゃな。それが正解なら、普段から江戸言葉を使わなければならないな」
「そうなりますねえ……どうすればいいのでしょう」
「やはり年季なのかな……年をとった演者は、普段の会話ではもちろん現代の言葉を使うが、古い言い回しが自然に出るな」
「はい、今日の会は、総合して、いかがでした」
「まあ、全体に上々と言える会じゃったな」
「はい、本日はこれまで」
「この後、上野広小路亭へ繰り込みます」
「それはまた次のページで」

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