12月7日 上野広小路亭

「さて、引き続き上野広小路亭へ」
「行きましたね」
「前座1号は神田あっぷる。『鉢の木』を演じたが、言い立ての練習というところで、まだまだこれから」
「前座1号って、前は前座Aって言ってましたね」
「それが前座2号が昔昔亭A太郎なので……」
「ああ、前座BがAになっちゃうんだ」
「訳が分からなくなるな……こんな説明自体も無駄じゃ」
「はい、それでA太郎は」
「『桃太郎』を演じた。勢いはいいな。ただ、子供が相手を見ながら話しているように見えるから、寝るのに気付くのが遅いし、前に親父が話してから寝るまでが短すぎるように感じる。まあ、前座じゃから、これからじゃ」
「はい、顔付けに載っている人ですね。昔昔亭桃之介
「『看板の一』、壺振りの仕草、あれはプロの動きなのじゃろうか……ううん、分からない」
「続いて三笑亭可女次
「『狸札』、二ツ目になった頃から注目している。不出来だということがほとんどないな。期待しているぞ」
鏡味八千代・初音
太神楽じゃ。初音の言葉がおかしいが、普通にしゃべっているんですってネタになったぞ」
「続いて三遊亭圓丸
「『親子酒』、たった二杯で酔ってしまったが、違和感なく進んだのが不思議じゃ。息子の元気さとの対象もお見事」
瀧川鯉朝……あれ」
「そう、ここまで前座以外の落語は全てお土産持参の噺家さんじゃ」
「大家さんも大変ですねえ」
「出し物は『浮世床』から夢。ちょっと危ないところも、見苦しくなく行けるのが人柄じゃ」
「はい、都家歌六
「お馴染みののこぎり音楽。懐かしのポップス、もちろん『アンコール』を叫んでおいた」
「仲トリは三遊亭圓輔
「『厩火事』、大人の落語って言ってたけれど、これなら子供に聞かせても……夫婦の心の機微は理解できないかな」
「難しいですね」
「まあ、面白い作品じゃ。ラストでほろっとさせて裏切る落ちもいい」
「作品がいいということですか」
「もちろん、演じる人がいいからその作品も生きるのじゃ……まあ、こういういい作品が見事に演じられると、落語って大人の世界であり、一部知識人のものかも知れないって……そんな不安を感じるのじゃ」
「さて、仲入り後は神田紫から」
「女流講談で『赤垣源三徳利の別れ』。この人も舌足らずと感じるな。若い子がいい口調なので、女流講談は活きがいい」
「はい、その子達の成長に期待しましょう。一矢
「これもお馴染み相撲漫談
柳亭楽輔
「『時蕎麦』じゃ。テンポのよさが何より。やはりこの位の位置で聞きたい噺なのじゃな」
「というのは……先日の『ひだまり寄席』ですね」
「うん。トリで演るのなら、やはりそれだけの何かを加えてくれないと……本当に蕎麦がうまそうで、後半とのギャップが出た」
三遊亭圓雀
「『紙入れ』じゃ。最後の亭主との会話で、『見られたのかい』『見ましたか』とあるが、どうも聞いていてハラハラする。その言葉で気付かれるのではって……」
「ああ、そうですね」
「それを圓雀は『見られたのかい』『見られたでしょうか』という具合で、こちらの方が筋が通っているように聞こえたな」
「はい、スティファニー
「怪しい外国人のマジック・ジェニーじゃった。『Can you speak English』に英語で応対してやって、『Japanese』にはポカンとしてやったら、不安になったらしい……『日本語通じなかったらどうしようと思った』って」
「大家さんも罪作りですよ……トリは桂伸治
「『片棒』を最後までたっぷり。次男が盛り上げて、三男が沈むので、客を最後まで引っ張るのが大変な作品じゃ。最後の最後まで見事だったのは菊之丞笑遊……これでもう一人加わった」
「はい、良かったですね」
「まあ早朝寄席も良かったし、後もこれだけ充実していれば、当然満足という一日でした」

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