8月5日 アテフ・ハリム演奏会

「さて、午後はアテフ・ハリムさんの演奏会へ行ったのじゃ」
「それが右の人だね」
「フランスのヴァイオリニストじゃ。ブラームスで人気の人じゃが、今年はモーツァルト生誕250年……20年前に録音されたヴィオラとの二重奏のマスターテープが見つかったのは大変な話題になった。今回それがあまりに素晴らしいので、CDに復刻したのじゃ」
「長い説明、ご苦労様」
「今回は潮田侑樹さんのピアノとの共演で、残念ながら問題の二重奏は演奏されなかった」
「じゃあ、何を演奏したの」
「まずモーツァルトソナタから……どうもE線の鳴りが悪い。後で聞いたら、どうも日本の湿気と気温の変化に、ヴァイオリンが夏ばて気味で、少し弾かないと調子が出ないのだそうな」
「楽器は微妙だからねえ」
「まあそれで今一かなと思っていたのだが、2曲目で突然調子が変わった」
「曲は」
サン=サーンスの『死の舞踏』、例の骸骨が踊る。これがすごい迫力、ヴァイオリンとピアノだけでこれだけの表現力があるのかと驚かされる。叩きつけるような強いピチカート、思わず足を踏ん張るほどの力の入れよう、そして、夜明けを告げる音はなるほど、鶏の鳴き声なのだと分かった」
「すごい演奏だったようだね」
「司会の人が喋り始めても、拍手が鳴りやまないほどだった。わしも分かっていたが拍手を続けるしかない……それほどの熱演、素晴らしいものだった」
「ほう」
「そして、ハリムさんと言えばブラームス。このスケルツォもすごかった」
「熱演だったの」
「そう。迫力のある演奏で、これも大歓声。わしも『ベネ!』と叫んだが、多くの人が声を上げておったぞ」
「まあいい演奏で良かったね」
「ここでアンコール、ラフマニノフの『ヴォカリーズ』。わしはこの曲は大好きじゃ。繊細な世界も味わえたぞ」
「右の写真は例によって演奏後に押し掛けた」
「もちろん。演奏中から目があって、不思議な心の通い合いもあったので、にこにこして迎えてくれた。実はこの後、他の演奏家も出たのだが、もう満足じゃ」
「聞かずに帰ったのかい」
「そうだ。夜になってから演奏されるスイスのコリーというピアニストのリストも聞き物なのじゃが、もう満腹になってしまったのじゃ。最初に話したモーツァルトのCDをいただいたが、こちらにはスキャナがないので、岡山に帰ってから追加するぞ」

表紙へ戻る    幕張へ行くへ戻る

inserted by FC2 system