7月29日 怪談 何がおこるか和夏蘭会

「さて、今週3日目の落語会」
「よく行きますねえ」
「可愛がっているメンバーじゃからなあ……今回は上野、開演時間も1時間遅いので余裕の到着じゃ」
「そんな時間でもよく行きますね」
「普通こういう会では前座さんなどを頼むのに、3人で全部やるという……」
「へえ」
「それで、まずはちゃんが受付、2人で開演する」
「どういうことです」
笑福亭和光君が取りあえず話をして……なぜ東京で上方噺かという……まあ、落語ファンならご存知、師匠の鶴光が芸協のメンバーになっているのじゃが、そんな話をした」
「自己紹介ですね」
「そこへ桂夏丸君が登場し、和光君が2002年7月に入門したが、その下がいない。2003年に夏丸君が入ったが、その下が来ない……翌年になって神田蘭ちゃんが入って来たのじゃが、講釈じゃからなあ……夏丸君は自分が最後の落語家になるのではないかと本気で思ったそうじゃ」
「大家さんが寄席通いに復帰したのがこの頃ですね」
「そう、リハビリを兼ねて動き出したのは1999年じゃが、この2003年から芸協の会員になって、本格復帰した」
「懐かしいですね」
「2003年のまさに夏、なぜか夏丸君の前座の時は列車が遅れてちゃんと聞いたことがない。しかし、当時の前座には珍しくしっかりした口調と、円右師匠のネタ(異説を唱える人もいる)を演じている珍しさで、最初から注目じゃった。秋の海外出張後、夢丸師匠に挨拶しようとした時に取り次いでくれたのが夏丸君で、次の機会にはお菓子を手土産に持って行った……それ以来の関係じゃ」
「懐かしさに浸っていますね」
「ということで、本日はこれぎり」
「終わるな……まだ最初の挨拶ですよ」
「そうじゃった……話をそらしおって……」
「自分でしょう」
「最後の噺家になるという覚悟をしていた夏丸君じゃが、その後に落語ブームが起こってしまった」
「あら……」
「それで、今は名前も覚えきれないほどの前座が……」
「あららですね」
「そんな話題と、さて、真打になるのは何時かという……」
和光さんはそろそろですか」
「まあ常識的には後4、5年かな……まだまだじゃな」
「大変ですね」
「最初が和光君なので、一旦引っ込んで着替え、夏丸君が一人残って話をして……後はお馴染みの……」
「お馴染みの……」
「歌謡ショー」
「ショー……あらら、ショウがないね」
「テープが伸びているのか、機械のヘッドが汚れているのか、カラオケの音が大きくなったり小さくなったり……」
「アクシデントですね」
「まあ、何が起こるか分からん会というタイトルじゃから……みんなの手拍子で救われたが、4番まではちょっと長いかな……」
「はい、次回の課題……って、歌はどうでもいいでしょう」
「さあ、やっと本番……和光君の『借家怪談』。和光君が地方巡業の間に夏丸君とちゃんが勝手に動いて、怪談の会にすることに決定……で、出し物もメールでのやりとりで決められたということじゃ。それもみんな『怪談』と付くネタにしようという意図が見え見え」
「振り回されている感じですね」
夏丸君はいいプロデューサーなのじゃ。色々な会を全部企画している」
「はい。和光君の席は」
「この作品は東京では『お化け長屋』という題。上方の演り方の面白さを大いに感じた。まず、最初の怪談話の時は、理由を明かさずに始める。聞いている方は本当なのかと思うが、間でこれがウソだということが分かる。理由は東京と同じ。これはサスペンスを盛り上げるが、その後何日かあって、同じやり方で追い返したという説明は無駄と感じるな……二人目の男への怪談は、相手の調子に狂わされて、だんだんおかしくなる……東京では前と後では最初から口調が違うのが普通……小さん(5)の芸談でもそれがいいんだという様に書かれているが、この上方風のやり方が正しいのじゃろうな」
「説明が長いね」
「後半のお化けは省略……東京では最初の男が財布を忘れていって、後の男がその財布を持って行っちゃったという落ち。和光君が演ったのは、店賃はこちらから出すと言った上、本当の店賃も出さなければならなくなったというので、『わしが引越先をさがさなあかん』というこもの。これも珍しいなあ」
「……大家さんの感想は、東京と上方の違いばかりですね」
「ここでお仲入り。食い付きは夏丸君で『江島屋怪談』」
「これは前に聞いていますね」
「格段良くなったな。だんだん自分の物になるのじゃろう。噺に入った部分は明らかに歌丸口調だから……」
「はい、芸人は歳を取るのも芸のうちなのです」
「さあ、トリのちゃんは『四谷怪談』」
「これも聞いたことがありますね」
「芝居などとは一味違う。夫の陰謀で女郎に売られたお岩さんが、真相を知って、夫、愛人の父娘、それに自分を売り飛ばした友人4人を呪って自殺するまで。お岩さんが商売に出るのを嫌がると折檻されるが、これが可愛らしく、客席からは笑いも出てしまう」
「あら、いいんですか」
「いいんです。陰惨になるところをいいアクセントになるのじゃよ」
「なるほど」
「以前は初めて幽霊になるところまで演っていたのを聞いたと思う……今日はまだ怪談になる前の部分。それでも人間の業を描いていて面白いね」
「ということで」
「大満足の一席でございました」

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