7月25日 お江戸日本橋亭

「さて、震災後寄席や落語会から離れておりました」
「最後に行ったのが2月の末からですから、5ヶ月ぶり」
2003年以来、岡山にいた時でも3月行かなかったのが最高記録じゃった」
「はい、大変でしたね」
「そういうことで、久し振りの寄席となりました。お江戸日本橋亭二ツ目勉強会でございます」
「参りましょう」
「前座は二人。まずは前座Aで『転失気』。ま、こんなものじゃろう……前座じゃから」
「はい、いい加減なコメント」
「続いて宮治。こちらは明るくていい。家族の話から入ったが、まだ小さい女の子が可哀想に父親そっくりだとか……」
「変な所に引っ掛かっていないで」
「そうそう、出し物は『元犬』。隠居に紹介する口入屋は犬だと知っているという設定……これは初めて聞いたが、この方が筋に無理がないな」
「さて、これから顔付けに載っている人で、昔昔亭桃之助
「『孝行糖』。与太郎がいいな。金馬のやっているよりももっと与太郎。地が出るのかなあ」
「ほめているんですか」
「ほめているよ。何だかにくめない。なるほど、回りの人が助けたいと思うのじゃな」
三笑亭月夢
「『三方一両損』。これも二人の乱暴者がそれぞれ個性があっていい。どっちがどっちか分からないような演出が多いからなあ……大家二人も面白い」
「いいですね」
「マクラの怪しい雰囲気は相変わらず。まあ、本来の落ちまでちゃんとやっていた。折角のお裁きから付け足しのようなのじゃが、そこはテンポを崩さず、つなげ方も良かった」
「月夢は大家さんはどうもという評価が多かったのですが、今日は良かったですね」
「続いては三笑亭可龍
「今日のお目付役で、昨年真打になった期待の若手」
「大家さんのお勧めです」
「『向こう泥』あるいは『空き巣』。二人の人物が対照的で……それだけのことなら前座でも出来るネタじゃな。それが真打に掛かるとこんなに面白くなる。さすがという素晴らしい出来じゃったな」
「ここでお仲入り、食い付きは三笑亭朝夢
「『夢の酒』。実はこの二十年くらいの間に二、三回しか聞いていない」
「少ないですね」
「それがみんなあまりいい出来ではなかった」
「ほう」
「かみさんの焼き餅があまりにわざとらしくて……それが自然に感じられたのは何が違うのじゃろう。やはり、じわじわと嫉妬心が盛り上がるのじゃな。それが感じられるというのことは素晴らしい出来じゃ」
「上々ですね」
「ここで色物。うめ吉俗曲。『奴さん』の踊り。わしゃ食い付きで見たぞ」
「また迷惑だったでしょうね……しょうがないね」
「何と、トリは桂夏丸君」
「すごい!……ちゃんとした席でトリじゃ……思わず涙が……」
「出てないって……」
「実は出る順番をネタで決めたのじゃな。何と『唐茄子屋』じゃ」
「大ネタですね」
夏丸君は全体にさっさと進めてしまうのがなあ……テンポはいいが、どこかに山を作ってくれるといい……伯父さんが助けてくれてからのやりとりはとてもいい……まあ、その辺りは真打でも難しいところ」
「課題は幾らでもあります」
「回りの人と若旦那の関係。それだけを図式化しても難しい噺だと分かるぞ。大変な作品じゃ……一般に演られているように吉原田圃の独白で終わるが、いい雰囲気だったな。夏丸君の語り口なら、ぜひ後半にも挑戦して欲しいと思う」
「はい、いい出来……って、みんな良かったですね」
「そうじゃな。出演が二ツ目だということでかなりすいているが、もったいないな。ぜひ皆さんも足を運んで……」
「今日はCMで終わります」

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