2月13日 東京散歩:その4「湯島天神」

「さあ、無事に昼食が終わりまして……
「昼食が無事でなかったら大変ですね」
「腹一杯で苦しいというので、これから上野まで歩くことと致しました」
「参りましょう」
「昼食のホテルから細道に入ります。樹木谷坂という……
「どういういわれです」
「江戸に幕府が来た頃、ここは樹木ばかりだったというのじゃ。音が通じて地獄谷と呼ばれていたのは実はここ」
「へえ」
「通りへ出ると、そこにあるのが折り紙博物館
右の写真ですか……雛祭りですねえ」

「こうして、無事湯島天神に参りました」
「また無事ですか」
水戸の梅祭りは3月末までですが、こちら湯島天神は3月6日まで」
「東京と茨城でそれだけ開きがあるんですね」
「3月11日の地震で水戸の偕楽園は大きなダメージを受けることになります」

「では東京の梅を見ましょう」

「まず紅梅(こうばい)。紅(あか)い梅じゃ」
「分かりますよ」
右の写真白梅(しらうめ)。白い梅じゃ」
「あれ……紅いのが『こうばい』だったら、こっちは『はくばい』じゃないんですか」
「訓読みするのが日本語は常識。『しらうめ』というのが正しいのじゃ。日本には自然の梅は一本もない」
「え……ないんですか」
「中国から来たもので、今自然に見えるのは、何かのはずみにこぼれたもの。遺伝子を調査すれば全部親戚というほどになる」
「へえ」
「さて、白い梅は気品があってたおやかに訓読する。一方紅い梅は華やかさを持って音読みをするというのが国語の常識。両方ある時は華やかさに引っ張られて『はくばいこうばい』という」
「へえ」
「そういえば、蕪村の
  白梅や墨芳しき鴻臚館
 という句があって、教科書には『はくばいやすみかんばしきこうろかん』と読むようルビが付いているものもあった」
「あれ、大家さん説では『しらうめ』でしょう」
「そう。全体の漢文的な調子に合わせたというのじゃろう。しかし、これは『しらうめ』と読む方が面白い。和語と後半の漢文調の対比、梅の白と墨の黒の対比。鴻臚館にはガラスがあったというので香りの良い梅は見えているが香りはない。それに対して墨は部屋の奥ですっていて見えないが香りはいい。こういう風に比較すると、漢文調で合わせるよりも和語の方が面白いと思う」
「はい……余計な話をしている間に写真が出ていました」
「梅の橋と建物の橋」
「ということで、湯島天神はご報告を終わります」

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