11月29日 品格のある落語会

「さて、12月の予定が夏丸ワールドになっているのじゃが、11月最後の落語会も夏丸君じゃった」
「はい、品格のある落語会です」
「今回はまず『城木屋』、三題噺の説明から本筋まで、歌丸師匠の演り方で、後の反省会でもその話題が出た。今一番歌丸に一番近い噺家ってんで、歌丸襲名の話も……」
「それは無茶ですよ」
「まあ、わしの感想ではこのネタ、歌丸師匠よりも品格があるように感じたな」
「若いからでしょうか」
「いや、歌丸師匠のだって録音に残っているのはかなり若い時のものじゃから。最後の言い立てが盛り上がっていいのじゃが、その前にもどこかで山場が欲しいな。悪くすると一本調子になってしまいそうな印象もある」
「さあ、続いては」
「『三人旅』から『神奈川宿』。『朝ばい』とも呼ばれているが、落語全集に収録されているものとは違うのが貴重じゃな」
「色々な形があるんでしょうか」
「そうじゃな」
「さあ、仲入り後は」
「『宗論』。今はみんな真宗キリスト教で演っているな。違いが分かりやすいからじゃろう」
「原作は違うんですか」
「仏教の中での違いだが、今の人には分からないかも知れないなあ」
「それで、キリスト教になっているんですね」
「まず、明治の開化でキリスト教が広がったという背景から入ったのが時代背景としていいかな。多くの演者が外国人かぶれの変な日本語で演じている。キリスト教の信者が怒ったというが……余りに嘘だし、聴いていて疲れる」
夏丸君は」
「息子はちゃんとした言葉で、さわやかな笑顔……これをもっと出しても面白いかな。キリスト教はこんなにさわやかにしてくれますよって……賛美歌を派手に歌って親父が怒るのもいい。歌をくすぐりに使っている人もいる……例えば『慈しみ深き』を歌い出すが『里の秋』になっちゃうとか……そうすると、歌で盛り上がりを見せながら落ち着いてから改めて親父が怒るということになるな」
「そこがちぐはぐになるんですか」
「段々腹が立ってとうとう手を出すというのじゃから、いいんじゃないかな」
「はい、そういうことで」
「因みに、わしの家が真宗だった」
「大家さんは宗教心はなく、親が死んで初めて知ったというレベルですね」
「葬儀などやってもらっているお坊さんには姉がいて、キリスト教の宣教師をやっているそうじゃ」
「え……落語と同じ」
「本当は真宗親鸞さんの自由な発想を生かしたもので、こういうことを本人の自由として許している」
「あら、そうなんだ」
「ここでお知らせ。夏丸君の『品格のある落語会』は今回をもって最終回となります」
「え……残念ですねえ」
「来年、1月22日(土)、夜7時半から、『桂夏丸研究会』として再スタート致します」
「じゃあ、終わりじゃないですか」
「はい、皆様もぜひ」

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