8月12日 お江戸両国亭
「さて、8日の圓朝まつりで、300円の籤を買ったら両国寄席の招待券が当たった」
「本当は1500円でございます」
「午前中はお盆を前にお墓参り。台風の影響か、風が強く、時折雨も混じるという……」
「大変でしたねえ」
「お昼は守谷ロックシティのフードコートでラーメン……最近はレベルが上がったな。昔はこういう場所のものは『安いからこんな物だろう』だったが、今は本格。ここもウドン、本格中華、その他何でも……いやあ、良かった良かった……ということで、本日はこれぎり」
「……また……大家さん、食べると安心しちゃうんだから。寄席の報告でしょ」
「あ……そうか……話をそらすなよ」
「誰が」
「前座は三遊亭幸吉で『夕立屋』。軽い噺で明るく演るのがいいね。もう一人三遊亭一太郎で『元犬』。」
「顔付けに載っている人ですね。まずは三遊亭きつつき」
「何とここで膝送り……椅子席での膝送りというのは生まれて初めてじゃ」
「大入ですね」
「2003年入門組で、このブログでもお馴染みじゃな」
「今日の出し物は」
「『かぼちゃ屋』。すごい与太郎……考えて固まるのが、何ともおかしい。不可思議ワールドを作り上げて、客席が混乱」
「混乱ですか」
「地なのか、演技なのか分からないのじゃ」
「続いて三遊亭小圓朝」
「まずは客席を落ち着かせて……出し物は『ちりとてちん』。まあ、面白いのだが……いつも言う通り、笑えればいいという落語で、センスはないな。まあ、ネタが悪いのであって、演じ手は良かった」
「三遊亭好太郎」
「『十徳』。十徳自体が分からないので、あまり聞く機会のない噺。『一目上がり』の逆で、数字が減っていくのじゃなあ……恥ずかしいが、今気が付いた」
「三遊亭神楽」
「『釜泥』。盗み出してから落ちまで一気に進んだ。テンポがいい」
「三遊亭鳳志」
「『厩火事』。仲トリにふさわしい、落ち着いた雰囲気。いい人情噺じゃったな」
「はい、食い付きは三遊亭兼好」
「『犬の目』。落語協会で聞くと、『久し振りの患者じゃ』とか何とか、余計なくすぐりが気になる。これも『ちりとてちん』と同じで、笑えればいいという演出が多いのじゃ」
「それで」
「研究熱心な先生で、いちいちメモを取るのじゃが、これが全部目の駄洒落。目玉を食った犬がタダシロウという……」
「それは、何か意味があるんですか」
「前座の演った『元犬』のネタじゃ」
「ははあ」
「柳家紫文」
「お馴染みの三味線漫談。長谷川平蔵ネタを4つほど……最後はマイケル・ジャクソンさんが倒れていた」
「やってますね」
「一般公募では、ネタになったのはドラえもんだけだったというな」
「で、4つで終わりですか」
「その後、土地に合わせて両国をたっぷり。粋だねえ」
「さあ、トリは三遊亭鳳楽」
「出囃子が正札付……話題になっているな」
「何です、それ」
「圓生を誰が継ぐかという……この鳳楽が名乗り出ている訳じゃ」
「で、どうです」
「まあ、今の文楽もセコ文楽と悪口を言われたのじゃから、いいんじゃないか」
「何だか良くない言葉ですね」
「意識しているのじゃろう。出した本も圓生の真似じゃったし、高座も面白いと思ったことがないなあ」
「で、今日は」
「『鰻の幇間』。土産の羊羹から始まり、人力が登場し、時代背景を明確にしていたのはいい。後半の店をもっとけなすと盛り上がるが、まあ、上々の出来だったな」
「圓生と比べてますか」
「いや……『百席』にこのネタは入っているが、圓生の録音では最低の出来かな」
「あら、そうなんですか」
「前の文楽が亡くなり、それでこのネタを入れる決意をし、一度高座にかけて録音したそうじゃ。出来は悪い」
「へえ」
「まあ、文楽、志ん生、圓生の3人の聞き比べは今でも面白い」
「はい」
「これらと比べると鳳楽のは、どこかポイントがつかめない感じがある。まあ、でも面白かったということで」
「全体では」
「五代目円楽が亡くなったが、この円楽一門会は勢いはあるぞ。とにかく面白い。いやあ、素晴らしい席じゃった」
「はい」
「さあ、せっかく両国に来たので、最後にちゃんこ鍋で」
「写真右」
「いやあ、満足満足ということで、これぎり」
「結局、食べる話で終わっちゃいました」