5月23日 堀之内寄席

「あれ……この写真は、前のページの続きですか」
「いや、こちらは堀之内のお祖師様、妙法寺の中庭」
「こちらでお詣りですね」
「はい、下が本堂でございます。厄よけ、ボケ封じ……『堀之内』という落語では神田からこちらまで約12キロを歩いてお詣りする。文治一門では『あわてもの』という題で浅草の観音様へ出掛けている」
「粗忽を治すんですね」
「お前もどうじゃ」
「大家さんの方がひどいおっちょこちょいじゃありませんか」
「ううん、一理あるな」
「納得するな」
「さあ、今日のメインはここでの落語会」
「会場が変わりましたね」
「まだ写真が出ていないのに、話題はどんどん先へ行っている……」
「読んでいる人は着いて来ていますかねえ」
「先月からこちらへお引っ越し。さすがにこちらが落ち着く。ということで、本日はこれぎり」
「また、大家さん、肝心の落語は」
「あ、そうか……忘れちゃった」
「しょうがないねえ」
「最初(はな)は昔昔亭A太郎の『ヒーローインタビュー』」
「題名からみると、新作ですね」
「そう。プロ野球の選手のインタビュー、その中で母のことだけで、自分のことを言ってくれなかったという妻が……もう分かるかな」
「今度は妻のことを話すと、母親が……」
「当たり。いかにも落語らしい設定で展開する。いかにもさわやかな感じでのインタビュー、ぐずぐずねちねちと言う母と妻……ねちねちが長くなるとちょっと嫌になるから、もう少し整理される部分もあるかな」
「はい、2人目は」
古今亭今輔、この寄席の責任者じゃ。わしは年に何度しか来られないので、師匠が出演するのは初めて」
「で、出し物は」
「『東京都市伝説』。作家を目指して彼女を捨て、東京に行くという男に、彼女は東京がいかに恐ろしいかを語る。これがどんどんエスカレートして……そして、上京した男は……」
「点々ばっかりですね」
「意外な展開が待っているので、いずれ許可を得て」
「はいはい」
「さて、中入りをはさんでトリは笑福亭里光
「二ツ目がトリってのも面白い企画ですね」
「出し物は『寝床』。トリにふさわしい大ネタじゃ。旦那の落胆と怒りが上方ではかなり強調されるが、そこはあっさり。東京のものと上方ものの間を行くような感じで……このバランスがうまくいくといいな」
「はい、全体の評価は」
「上々の席でございました」
「じゃあメインの会が終わったから、帰宅ですね」
「何を言うとる。これからじゃないか」
「へ……」
「これから銀座へ出るのじゃ」
「田舎者だから、一回上京すると幾つのイベントに参加するのやら……」
「はい、まだ続きます」

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