5月23日 早朝寄席

「さて、23日のメインは、上野鈴本で開催される早朝寄席
「恒例……って、今年初めてですね」
「忙しかったからなあ」
「はい、参りましょう。最初は」
麟太郎で『ぞろぞろ』。神様が遊んで戻ってくる。何という神様かは明言していないが、お詣りに来た人に応対する……もちろん相手には聞こえないのじゃが……どうもこれが違和感じゃな」
「どういうことで」
「この神様がどこかとぼけた、親しみやすい感じを与えるネタ。その神様がはっきり描かれてしまうとなあ……」
「はい、続いては菊六
「期待の星。またも『欠伸指南』」
「またも、って……」
「このところ数回同じネタ」
「しょうがないですね」
「いや、そうではない。この早朝寄席は勉強会じゃ。ネタを仕上げる、こういう風にしたというのを見せるもの。そう考えると筋道が通っている」
「ということは」
「このネタ、談志『この怠惰こそが本当の落語』というくらいで、客が聞いていて欠伸をするほど出来がいいという。それを、菊六はいいテンポで進める。菊、じゃない、聞く度に無駄が省かれて完成が見えてきているように思われる。これは今までにない、新しい『欠伸指南』になること間違いない」
「へえ」
「次はきく歌で『御神酒徳利』。時間の関係で、このネタは無理じゃな。ポイント以外は省略して進めたが、やはり端折ったものではなく聞きたい。悪くはないのじゃが」
「はい、今日のトリは」
粋歌
「え……去年二ツ目になったばかりの女性ですね」
「そう。本当なら最初に出るはずじゃが、この勉強会は位に関係なく、くじびきで順を決めている」
「そうなんですか」
「出し物は『辰巳の辻占』。女性が演じるから、当然相手の女をどう作るかに期待が集まる」
「どうでした」
「主人公の男が軽率過ぎるな。まあ、だからこそ親類も心配するし、女にも軽くだまされる。筋道は通っているのじゃが、わしはどうも……もう少し落ち着いた雰囲気がほしい」
「大御所のを見過ぎでしょう」
夢丸師匠とか、いいな……まあ、女の方も軽いからバランスは悪くないのじゃが……まあ、何度も言うように勉強会、色々工夫してもらいましょう」
「ということで」
「今回は、そういう点で、工夫や挑戦が見られたということで、満足の行く早朝寄席ということにしておこう」
「はい、せっかく上京した大家さん、これで帰るってことはありません」
「はい、まだ続きます」

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