5月1日 芸協真打昇進披露興行 後半

「さあ、真打披露興行、今日は鹿の子可龍が登場します。後半の最初は真打披露口上」
「楽しみですね」
「司会は楽輔。最初からお辞儀をしたままだった二人が顔を上げる。客席から『ご両人』の掛け声。楽輔が『客席からご両人と声が掛かりましたが、新郎新婦ではございません』」
「さっそくお笑いですね」
「因みに、声を掛けたのはわしじゃ」
「また、いらないことを」
鹿の子の師匠の小柳枝が挨拶。柳昇に入門して師匠が亡くなり、芸協では女性3人目の真打になるという話。続いて可龍の師匠の可楽が落語の歴史、自分の名前と可龍という名前について。落語家は儲からない。笑点メンバーが死んで代わりに入るようにならないと儲からないという……」
「すごい挨拶ですね」
「理事である昇太が挨拶。皆さんが思っているよりは偉く、儲かりを始めているという自己紹介。新真打は責任が重い、特に師匠の看護が大切な仕事になるという」
「あらら」
「副会長の小遊三の挨拶。『立派な師匠に手込めにされた……じゃない、手塩に掛けられた』というとんでもない話から。二人が真面目に修行をしていて、特に鹿の子は古典に新作、踊りまで披露するが、問題は自分の知らない男と子供を作ったことという……」
「面白い挨拶ですねえ」
「これでも大したものではない。二人とも真面目な真打なのじゃなあ」
「そうなんですか」
「さて、一端幕が下りて、改めて新真打の三笑亭可龍が登場」
「待ってました」
「真打昇進のお目出度い席にふさわしく、『締め込み』」
「え、それって」
「泥棒の噺」
「ふさわしいんですか」
「泥棒は客を取り込むというので縁起をかつぐのじゃ」
「はい、で出来は」
「もちろん、真打になって初めての高座ですから。人物の描写も、展開も明るく進む。残念ながら時間切れのようで、泥棒さんと飲むところで終わり」
「あれ、落ちは付かないんですか」
「いや、うまく落ちのようにしていた。そこもうまいな」
「東京ボーイズ」
「歌を数曲。もちろん最後は『中之島ブルース』、さすがにかなり端折ったな」
「今日はそれでいいんですね」
「そういうことじゃ」
「さて、これから師匠連の登場ですね。三笑亭可楽」
「『臓器屋』という珍しい新作。大したものではないが、人気者になって欲しいという期待があるのじゃな」
「春風亭小柳枝」
「『長屋の花見』。出掛けるまでの展開から、酒、肴、そして俳句で締め。さすが、今最もいい噺家」
「ボンボンブラザーズ」
「お馴染みジャグリングと、ご存知鼻に紙を立てる芸。今日もそのまま見事に成功」
「さあ、お待たせしました。トリの春風亭鹿の子」
「『皿屋敷』。昔の女性は男の描き方が課題だったが、今はみんな上手くなったなあ……それに加えてお菊の幽霊がいい。お得意の化粧をする真似も加わって、お見事」
「そういうことで、素晴らしい興行でしたね」
「因みに土産に持って行ったのは、子供へのお菓子と、お酒『人気一』の樽でございます」
「はい、以上をもって、真打昇進の全てのご報告を終わらせていただきます」

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