4月9日 内田奈織演奏会

「さあ、今夜は内田奈織ちゃんの演奏会」
「今年も来ましたね」
「2003年のCDデビュー以来、応援している。2005年までは毎年1回の演奏会だったが、2006年には京都、大阪、銀座、日本橋の演奏会に参加、2007年には京都、新宿、銀座で2回、2008年は千葉、渋谷、銀座が3回、目黒と合計6回の最高記録。昨年は銀座2回と中央区、恒例のクリスマスコンサートは仕事で行けなかった」
「まあ、年に4回行っているんですねえ。合計22回目ですか」
「その前にオーケストラとの競演を聞いているはず。それで目を付けたのじゃから」
「安っぽい言い方……あれ、2007年の新宿が、どうして赤字なんですか」
「その演奏会のDVDが発売になった。待望のドニゼッティ『ランメルモールのルチア』から『泉の場』が入っている」
「大家さんがCD化しろって要求していた作品ですね」
「そう。他にCD未収録としてはヘンデルの『ハープ協奏曲』も入っている」
「はい、CMでございます」
「で、写真は会場、池上本門寺
「見事なしだれ桜でございます」
「左は庭園の全景。ここを背景に演奏するのでございます」
「すごい雰囲気ですねえ」
「リラックスした演奏をと企画していたのに、次第に落ち着いていい雰囲気になってしまった」
「はい、演奏会に参りましょう」
「まずは『さくら変奏曲』。これはメロディは誰でも知っているのじゃろうが、編曲はクラシック。色々なテクニックを見せた」
「桜もおしまいだから、いい選曲ですね」
「続いては本格のクラシックから3曲。パッセルマンの『五月の歌』、イベールの『スケルツェット』、サルツェドの『夜の歌』……違っていたらゴメンなさい」
「メモしないんですか」
「最近は寄席でも演じている間にメモを取るなんて失礼な客が増えているが、演者に失礼じゃ。絶対にいかん」
「大家さんはどうしているんです」
「原則丸暗記。しかし、年を取ると記憶力が衰えているのが分かる。ここ数年は寄席の演目と演者それぞれたった20組程度なのに覚えられなくなった。それでメモを取るようにしたが、失礼なので、退場して、前座がめくりを代える隙に書くようにしている」
「で、今回は」
「同じことじゃ。演奏中はもちろん、演奏が終わっても奈織ちゃんが話をするからメモを取るのは失礼。結局全部丸暗記……演奏中にちらしなどをチェックしているお年寄りがいたのは、何をしに来ているのじゃろう」
「まあ、知っている曲なら覚えられるんでしょうがねえ」
「作曲家名は怪しいが、曲名は絶対に間違いない。『五月の歌』はハープ奏者が作った、可愛らしい曲。『スケルツェット』のイベールはお馴染みの作曲家じゃな。小さなスケルツォってんで、曲がふと途切れたり、なかなかお洒落な作品。最後の『夜の歌』は少し前衛的で、弦の位置を変えて音の違いを利用する、爪で弾く、胴を叩く」
「すごいですね」
「わしは実はこういう前衛音楽が好きで、今までもの『ROKUDAN』は聞きたい曲じゃ」
「はいはい」
「さて、続いて村松崇継さんの作品を2つ」
「これはテレビドラマから仕事を一緒にされている作曲家ですね」
「映画『夕凪の街 桜の国』から『ひとつの願い』」
「また桜ですね」
「うん。桜のはかなさ、命のはかなさ、戦争という時代の桜……そういうドラマを感じさせた」
「最後に協奏曲『希望への翼』」
「これはお馴染みの作品になりました」
「やはりいいな。ドラマを感じさせる作品を素晴らしい演奏で聞く幸せじゃ」
「右の写真は」
「前半の衣装。因みに、写真撮影は禁止されておりますので……」
「じゃあ、なぜ写真があるんですか」
「休憩の時間にポーズを取らせて……」
「ひどいね」
「さあ、後半に行こう」
「後半の衣装は」
「CDジャケットのシックな衣装で……お前、衣装より演奏だろう」
「大家さんがこだわっているんでしょう」
「女性はいいな……着ている物で雰囲気が変わるから……オッサンの演奏ではスーツしかないもんな」
「はいはい、年寄りの愚痴になる前に、演奏の方へ行きましょう」
後半は新しいCD『あふれる愛。』に収録された作品を中心に。まずは『旅立ち』、新曲だがどこかで聞いた懐かしい響きを持った作品。
 続いて胡弓の木場大輔さんを迎え、『越天楽』」
「胡弓はめったに聞けませんね」
「中国の二胡という楽器と混乱する人が多いが、れっきとした日本の楽器なのじゃ」
「へえ」
「続いて胡弓のソロで古典の『みだれ』、二人で木場氏の作品である『潮の道』、泣きなさいの『』と続く」
「胡弓とハープは珍しいですね」
「よく競演はしているらしいがな。わしは初めて。いいアンサンブルじゃな。胡弓の伸びのある音と、ハープの音色がよくマッチしている」
「はい、いい演奏は聴く人を幸せにするんですね」
「名言じゃな……って、わしの口癖じゃ」
「はいはい」
「再び奈織ちゃんのソロとなって、『たしかなこと』をオルゴール風に、『TSUNAMI』をバラード風に」
「これは大家さんもよく演奏していますね」
「テンポをゆっくりにするととてもいい雰囲気になる。名曲なのじゃなあ」
「はい」
「続いて『千の風になって』」
「これはよく演奏していますね」
「歌って人気になった秋川氏がまだ騒がれる前に奈織ちゃんは伴奏をしていた。今回のCDには秋川氏がメッセージを寄せている」
「皆様もぜひ」
「最後に『卒業写真』でエンディング」
「これも……ちょっと遅いですが、季節にいいですね」
「アンコールに『翼をください』……歌入りで」
「あら……」
「まあ、とにかく素晴らしい演奏、文句無しじゃ」
「はい、大満足ですね」
「ただ……」
「何か問題でも」
「ディナーを付けるチケットがあったのじゃが……」
「駄目なんですか」
「仕事が終わって飛び出したが、会場まで3時間きっかり。ぴったり開演時間に飛び込んだ」
「じゃあ、始まっちゃったんですか」
「もちろんわしが着くまで待たせて、5分遅れの開演となった」
「ひどいね」
「自宅は近いから、帰りは2時間ちょっとで到着」
「じゃあ、食事の時間がないですね」
「おにぎりを買って帰りの電車で食べた……こんな行儀の悪いことはしたくはないのじゃが……まあやむを得ない。たまたますいていたので、まあいいか」
「はい、大変でした」
「最後は愛する二人のツーショットで幕といたします」

inserted by FC2 system