3月31日 TWO

しのばず寄席に引き続いて神保町の落語カフェで行われたTWOへ」
「例によって忙しいですね……大変でしょう」
「翌日が人間ドッグで、遅い食事が取れない。打上に参加出来ないというのは辛いなあ」
「そこかよ」
「さて、落語協会は2003年に入門したメンバーが全員そろっております」
「……何ですか、突然」
「このメンバーが10人いて、このページでもお馴染み、柳家ろべえ古今亭菊六鈴々舎馬るこ柳家こみち……などなど……」
「もう、半数以上は顔なじみですからねえ」
「そろって真打昇進となったら……祝儀だけで破産するな」
「はいはい」
「10人のメンバーが交替で落語カフェTENという会をやっている。昨年の7月公演の最終回に行って、全員の手拭いを入手、3人をのぞいてサインも入れさせ……」
「図々しさ満載で生きて来ています」
「その報告……本店のブログ・日記で昨年の7月19日を見ていただけると……」
「宣伝しているな」
「そこで紹介しているのじゃが、落語協会以外で、同じ年に入門したのが、芸協桂夏丸君と円楽一門三遊亭きつつき君の二人だけ」
「はい、いずれもこのページではお馴染みで」
「この二人でTWOをという……その、ブログに書いていたことが実現した訳じゃ」
「……前置きが長いねえ」
「そういうことで、まずは、こうした経緯を説明」
「10対2の対決だから、気合いも入りますね」
「それが夏丸君はずっとぼーっとしていて……」
「あら……何です」
「最初に出るから、おさらいをしているという……」
「あらら……対決に気合い入ってませんかねえ」
「ううん。喧嘩をしたら絶対に負けるな……まあ、そういうことで、夏丸君の1席目」
「入りましょう」
「これが何と『稲川』」
「あら……昼のしのばず寄席のトリとかぶっちゃいました」
「そう。相撲好きの夏丸君じゃから、マクラからの経緯はいいな。マクラの力士は『四十五日』というあだ名でないと……ちょっと教えておこう」
「課題はあるんですね」
「課題はその程度のちょっとした表現。若々しいリズムで運び、一気にラストまで持っていった。良かった」
「はい、きつつき君の1席目」
「気合いの入らない雰囲気の夏丸君を責めながら、本人も頼りないというのが笑える」
「で、出し物は」
「『葛籠泥』。よく理解出来ていないという人物が、何ともおかしい。これが夏丸君の様子、マクラから受け継がれているから、実に効果的。上出来じゃな」
「はい、ここでお仲入り。食い付きもきつつき君ですね」
「『長短』だが、かなり手を加えてあるな。さっきの会話の部分が後から続いていたりするのが、いかにもその人物を描写していておかしい。気の長い方の描写も傑作じゃった。落ちもこの展開から生まれる、今まで聞いたことのないもの……面白い」
「ほめますねえ」
「これで後は言葉じゃな……歯を矯正することが課題かも知れない」
「芸じゃないね」
「でも大切なところじゃ」
「さあ、トリは夏丸君の2席目」
「まあ、予測がぴたりと当たって『もう半分』。すっかり得意ネタになったな。きつつき君の2席がお馴染みの古典を崩して素晴らしい作品となった。それに対して、本格をぶつける訳じゃ。更にきつつき君の笑いに対して、このネタという対比も見事じゃな。前半の酒を飲む場面ではお客さんを笑顔にさせ、悲劇から一気に怪談へ進めて行く。若さだけでは持って行けない、本格の芸というものがあるのじゃ。それが感じられるものじゃな」
「はい、そういうことで」
「かなりハイレベルの若手の会となった次第でございます」

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