3月31日 しのばず寄席

「さて、これは本当に久し振りのしのばず寄席
「こちらは、どういう会ですか」
上野広小路亭で、いつもの芸協に加えて、円楽一門、立川流、その他、色々な会の合同出演で行われる寄席」
「これは貴重ですね」
「月に数回、それも平日しかやっていないが、1人あたり30分を取ってくれるので機会があればぜひ行きたい会」
「はい、では参りましょう」
「まずは前座で春風亭昇吉。『一目上がり』、前座なので七福神で落ちになった。難しい言葉が出てくるから、ぜひ身につけていってほしい」
「はい。続いて三笑亭可女次
「今日は彼がお目当て。『幇間腹』を演ったが、今回は実にオーソドックス。若いのだからもっと意外性が欲しいかな」
「でもいいんですね」
「いい。若旦那が軽い演者が多くなっているが、落ち着いた雰囲気。幇間もわざとらしさが目につく演出ばかり見られるが、それも普通の幇間……それなのに、面白い。よく磨いているのじゃな。人間を作って笑わせるというレベルを越えているのじゃ」
「続いてざっくばらん
漫才。まだまだという感じ。群馬代表をネタにしているが、夏丸君とのコラボが出来るようレベルアップしてほしいね」
「はい、立川ぜん馬
「『長屋の花見』、大家と店子の思いやりがいい。嫌々行っているようで、店子の方も気を遣っているのじゃな」
春風亭昇乃進
「先月と同じ『善光寺由来』。もちりん、今日は時間があるから『お血脈』まで行くのではないかという期待があった」
「どうでした」
「行った。まあ、前半の挿入されるくすぐりや解説はほぼ前回と同じ。タイムリーな話題が加わるといいなあ」
「後半は」
「五右衛門の臭い芝居がもう少しほしいような気がする。まあ、悪くないぞ」
めおと楽団ジキジキ
「テレビにもよく出ているようじゃが……どうも……ねえ……その……」
「歯切れが悪いね」
「関東の芸人さんらしい……」
「らしいって」
「臭い台詞やわざとらしいネタ……どう見ても上方なのじゃ……だから、客席の乗りも悪い。都々逸の台詞は違うし、四十七士が新撰組になっちゃったり……もう一つだったな」
「仲入り前は土橋亭里う馬
「『強飯の女郎買い』……これは『子別れ』の最初の部分。上中下を通しで演じる人は何人かいるが、この上だけでしっかり聞かせるのは大変じゃ」
「続きがあるなら我慢しますね」
「そう。しかし、熊さんの性格描写、他の人物とのやりとり、実に生き生きとして、酒に弱くてだらしのない生活に落ち込んでいる人物を見事に描写した。見応えのある落語だったぞ」
「はい、食い付きは神田すみれ
「喉の調子がおかしいな……『昭和娼婦伝』。中心の人物の悲劇があり、脇役が主役に転じるのじゃが、全体としてドラマが感じられないな。これは心理描写が少なく、ストーリーの面白さで聞かせるからじゃろうか……講釈は聞き込んでいないから」
「変な言い訳。三遊亭遊吉
「早く来ていたが、ぜん馬師匠と入れ替えた様子。今日は『人形買い』。買いに出るまでのやりとり、店での交渉、小僧との会話、面白いぞ。更に占いで折角の儲けを取られるという、落ちまできちんと……この寄席ならではということじゃ」
青空たのし
「おや、懐かしい名前ですね」
「おい、うれしたのしという漫才を知っていると、かなり年じゃないか」
「あ、そうですか」
「お前幾つなんじゃ」
「さあ……作者がちゃんと設定してくれないものですから……」
「しょうがないね」
「私の台詞です」
ハーモニカ漫談。3年ほど前からハーモニカを練習し、昭和の歌謡曲ならリクエストに応えられるようになったおいう……いい芸じゃな」
「昔の漫才の人が一人になって、色々やっていますね」
「もちろん、年齢は高いが注目に値するな」
「さあ、トリは三遊亭圓橘
「今日は年寄りにちょっと常識のない客がいて……」
「どうしたんですか」
「一番前の端っこの席に対して、『そこ空いてるのか』ってどなって、足を投げ出すのに若者の荷物を蹴飛ばすし……そのくせ自分の荷物は舞台に上げて……」
「ええッ……」
「そういうのがいるんだ。そのくせ嫌がらせがひどくて、演じている間にプログラムを音を立てて開いたり、いびきをかいて寝たり……」
「最低ですね」
「何をしに来ているのじゃろう」
「さあ」
「更にもう一人、一番後ろの席なのに、前まで聞こえるような欠伸をして……」
「これもひどいですね」
「寄席でよく見かける人で、テレビ局の関係者……A局はひどいことをするな」
「で、落語の方は」
「当然嫌になるよな……愚痴っていたが、トリだし、他の客はまともなんだから……少しずつ修正して『稲川』へ。よく我慢して、いい芸を演ってくれたとほめておこう」
「はい、まあ、客には課題があるようで」
「演じている方に関しては大満足の一席としておきます。これから神保町の落語カフェで開催されるTWOにハシゴします」
「はい、それはまた明日」

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