3月30日 水戸を行く:その2「梅の花」

「さて、それではお待ちかねの梅の花を……」
「突然ですが、昨日付けで水戸の偕楽園をご紹介しております。ちょっと遅かったので梅は盛りを過ぎたってことで……じゃあ、梅はないのかという疑問に対して、今日お応えするという……」
「回りくどい説明はいらないなあ」
「大家さんが説明しないんでしょう」
「はい、ご覧の通り梅はちゃんと残っていて……」
「無視かよ」

「やはり紅梅の方が遅いようじゃ」
「べにうめですか」
「お前、漢字は読めるようにしろ。『紅梅』は『こうばい』と読む」
「あれ、だって『白梅』は『しらうめ』でしょ」
「そう。それが正解。『しらうめ』は気品を、『こうばい』は華やかさにつながるという音の面白さがあるのじゃ。両方混じって咲いていると、華やかさに引きずられて『はくばいこうばい』という」
「へえ」
「与謝蕪村の俳句に、
  白梅や墨芳ばしき鴻臚館
 というのがある」
「しらうめやぼっこうばしき……何と読むんです」
「お前なあ……会話体で書いているのに、実は話していないのがばれるだろう」
「済みません」

しらうめやすみかんばしきこうろかん
 と読む。最近の古典の教科書では『はくばいや』と読ませているが、さっき説明した通り単独で『はくばい』と読む例はない。全体の漢文調の雰囲気だからそう読むのだという」
「違うんですか」
「墨の黒と白梅。梅は本当は匂うのに鴻臚館はガラス窓があるのが有名、だから目に見える梅なのに匂いがなく、墨はすっているのが見えないのに匂いを感じる。こういう対比が面白い句なのじゃ」
「なるほど。その対比には『しらうめ』がいいんですね」
「正解。柔らかい感じと、後半の漢文調の固い感じもいい対比になるのじゃ。本日は国語のお勉強で……読み終わりと致します」
「大家さん、話題は水戸の梅でしょ……紅梅の写真が出ているのに、無視だし」
「あ、そうか……話をそらさないでよ」
「誰がそらしているんですか」

「最後に美しい花を……」
「無理矢理だね……梅娘ですか」
「襷には『梅木娘』とあったな。『呻き』のような感じで……」
「本当は『梅大使』っていうんですよ」
「因みに、美人とはどこでも言っておりませんので、誤解のないように……」
「また失礼な……」
「一応一緒に記念写真は撮って来た」
「しょうがないね」
「はい、次のページでは偕楽園から千波湖へ移動します」

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