3月17日 品格のある落語会

「さて、今夜は落語カフェ桂夏丸君の『品格のある落語会』」
「これも恒例になりました……って、1月に同じ事を言ったような気がしますね」
「はい。昨年3月に始まって、ちょうど一周年。7回目ということになりました」
「大家さんは皆勤ですね」
「そう。お客さんは女性が7割から8割。みんなわしを目当てに集まって来る」
「ないない……夏丸君といえば、先週の日曜日、7日に上野広小路亭に登場、何となく老成しているようで若い力がほしいなんて言っていましたね」
「よく覚えているなあ……言った本人が忘れているのに」
「で、今夜はどうでした」
「そう。若さあふれ、明るく勢いがある高座が展開したぞ」
「じゃあ、評価は」
「もちろん、満足満足の席でした……はい、本日はこれぎり」
「……またあ、大家さん、中身の紹介がないですよ」
「え……何が起こったのじゃろう」
「知りません」
「1席目……マクラから歌謡ショー
「え」
「しょうがないなあ……23日の池袋では恒例の二ツ目の会が開催され、夏丸君はトリを取る」
「やったね。大家さんはもちりん、応援に……」
「ううん……翌日から出張で……年度末で、多分開演の頃に職場を出るから……夏丸君の1席だけのために4千円はちょっと……」
「ケチだね……皆様はぜひ」
夏丸君の歌謡ショーもございます」
「いらない、いらない」
「まあ、この日もそこで披露する歌の紹介、次の会で歌う曲まで……」
「落語会じゃないですね」
「まあ、そんな調子のマクラから、出し物は『粗忽長屋』。気の短い方はもちろん、気の長い方もいい調子で、とにかくテンポがいい。これを待っていたような気がするな。残念なのは、中にまたも歌が……」
「おいおい……」
「まあ、裕次郎じゃから許すか」
「知りません……続いて2席目」
「客席からも『待ってました』の声が掛かった……1席目の出来から、二重の意味になるな」
「へえ……そんな声を掛ける客がいるんですか」
「わしじゃ」
「あら……しょうがないね……」
「先日7日と同じ『樟脳玉』。途中端折った部分までたっぷり。ううん、『もう半分』など、こういう笑いの押さえられた作品を取り上げていたから、何となく落ち着き過ぎた雰囲気があったのじゃ。しかし、今日の『樟脳玉』はやはりいいテンポで明るい犯罪として描いた。寄席でこの雰囲気が出たら、もっと人気が出るぞ」
「はい、仲入りをはさんで、最後は」
「これは懐かしい『英会話』」
「あら……この作は」
「そう、夏丸君がデビューしてよく演じていたもの。『都々逸親子』と共に、梅橋の録音が残っていた。前座時代に夏丸君に声を掛けたきっかけがこの一連の作品で……まあいい。実は円右の作品だと聞かされたのじゃ。まあ、懐かしく聞いたが、さすがじゃな。7、8年の差はこんなに大きいのじゃ」
「良かったですか」
「素晴らしい。梅橋の録音はいかにもわざとらしい英語じゃった……実は何人も演じているのじゃが、みんな時代のずれをかんじさせる」
夏丸君は」
「一時代前の世界を設定している。今の時代ならこの両親はあり得ないし、『金坊』なんて呼び方もあり得ない。そんな矛盾を感じさせる人が多い。寿輔師匠のも、面白いがそういうずれがあって……申し訳ないが聞いていてちぐはぐさを感じるのじゃ。それを夏丸君のものは不自然さを感じさせないものになっていた」
「素晴らしいですね」
「うん、今日のはこのシリーズでも最高の出来じゃったな」
「はい、本日はこれまで」
「もう一つお知らせを……31日の水曜日、同じ落語カフェで夏丸君ときつつき君のTWOが開催される」
「これは……」
「落語協会でろべえ君、菊六君、馬るこ君、こみちちゃんなど、10人の同期生が1人も脱落せずに来ている。このメンバーが『TEN』というシリーズをやっているのじゃ。その同じ同期で、芸協は夏丸君だけ、他に円楽一門できつつき君だけ……他にはいないのじゃ」
「へえ」
「若者が競い合うということで、この12人は面白いことになるぞ」
「はい」
「問題は、真打昇進が同じころになるのじゃろう……ご祝儀がどれだけになるか……全部親しくなりそうじゃし……」
「今から貯金しておくことですね」
「はい、31日のTWOもよろしく」

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