2月14日 上野広小路亭

「さあ、今年初めての広小路亭
「来ましたね」
「前座は柳亭明楽で『子ほめ』。妙なテンポ、全くの素人芸……だが、上手な素人よりずっと面白い」
「訳の分からない解説ですね」
「間違えたりするのが本当におかしい。実は本当に全く落語に縁のないところから入門した変わり種じゃ」
「不思議な人がいるものですね」
「もう一人瀧川鯉ちゃで『転失気』。これはなかなか。後半盛り上がる噺じゃからもっと受けてほしいな」
「はい、ここから顔付けに出ている人で、昔昔亭桃之助
「前日の土曜日、取手のひだまり寄席に来てくれたのじゃが、残念ながら噺は聞けなかった」
「出し物は」
「『家見舞い』。『転失気』からこれへつなげるか」
「ここで怒っても」
「しかし、明るくてちっとも不快にならないな。本当にこの1年くらい素晴らしく成長したぞ。お土産持っていく価値があるってもんだ」
「続いては雷門花助
「何と、鳴り物入りの『七度狐』。今日はお囃子さんがとてもいいな。上方ではお馴染みの噺じゃが、東京でも桂小南が演っていた。小南は鳴り物入りを聞いたことがないがな……まあ、お陰で東京で演っても全く違和感はないのじゃ」
「ネタの解説ですか」
「もちろん鳴り物に乗っていい出来に決まっているじゃないか」
「はいはい。次は一矢」
「相撲漫談。昨年、1年以内に朝青龍が引退しなかったら坊主にすると言っていた。それがこの間の優勝……さあ坊主だと思ったら……意外な形で予言が的中」
「変な話……続いて春風亭昇乃進
「『善光寺由来』。元々地噺で、脱線に次ぐ脱線。面白いのじゃが、脱線が芸能界とかテレビとか……とっても偏りがある。これがもう一つという感じかな」
春風亭柳好
「『悋気の独楽』、テンポよくって気持ちがいい」
やなぎ南玉
「お馴染みの曲独楽。独楽続きで面白いな」
「仲トリは三遊亭圓遊
「『湯屋番』。時間切れになったようで、ちょっとちぐはぐな印象の落ちだった」
「さあ、食い付きは神田紅
「『伊達家鬼夫婦』。マクラが長かったのか、二回目の立ち会いは省略して、これからが面白いという切れ」
マグナム小林
ヴァイオリン漫談。お馴染みのネタ……写真を渡して来た」
桂小南治
「『いかけや』。前半に話題を出した桂小南の弟子で、これも師匠の得意としたネタじゃ」
小南ネタというのが重なったんですね」
「そう。子のネタも小南しか演っていなかったなあ。小南治は子供が走る仕草が何ともおかしい。鰻屋の騒ぎでいかけやに関する下げとなった」
三遊亭遊三
「お馴染みのマクラを重ねてから時刻数字を説明して『時そば』へ。ちょっと急ぎ過ぎかなと感じた」
東京太・ゆめ子
「昨年のお約束通り、手拭いをいただいた」
「はい、左ですね」
「スーツのポケットに入っていたからしわくちゃじゃ」
「でも良かったね」
「ネタはいつものように京太師匠がぼんやりしていて、ゆめ子師匠が突っ込むのじゃが、これが今日はもう一つ盛り上がりに欠けたな」
「大家さん、そういう比較はいけないんでしょ」
「まあ、そうなのじゃが、本当はもっとという気持ちがあって……でも悪くはないのじゃよ」
「さあ、トリは三遊亭遊之介
「『味噌蔵』。前半は省略、子供が出来たということは抜きで、奥さんの実家がご馳走をするという。つまり、主人の描写を省略して、番頭以下の使用人が主人公となる」
「あれ……同じ噺なのに主人公が変化する」
「そうなのじゃ。もちろん基本的に台詞なども変わるところはない。それが演り方によってこうも変化するものかな」
「はい、これで上がり」
「このところ大満足ばかり続いていた。それに比べると前半の若手にインパクトがあって、印象に残ったな。しかし、年長者はそれぞれの味を出しているのじゃから、決して不満はない。上々という一日じゃったな」
「はい、そういうことで、ご報告を終わります」

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