1月21日 『落語いいとこ撮り』完成記念落語会

「さあ、この日は落語カフェでDVD『落語いいとこ撮り』の完成記念落語会
「落語が3つも並んでややこしい……3つとも色が違うし……」
「これは3人の二ツ目が全部で15席を収録、最終的にそれぞれ1つだけ傑作を選んで収録したものなのじゃ」
「二ツ目で、すごいですねえ」
「今夜の落語会はその記念じゃから、木戸銭3千円でそのDVDと3人の手拭もつくという」
「これはお買い得」
「もちりん。だから予約で満員。でも、せっかく来てくれた人にってんで、後数人入れたな」
「本当に超満員になりましたね」
「さあ、もちろん落語は収録されたものと違う演目で……最初(はな)はこのDVDの仕掛人、鈴々舎馬るこで『ちりとてちん』」
「このところブログによく登場していますね」
「すごいぞ。とにかく挑戦の見える噺家。十年後には落語界の顔になっているかも……ちょっとほめすぎ」
「それがお馴染みの『ちりとてちん』となると、期待も大きいですね」
「そう。噺で笑わせるポイントがうまいな。『灘の生一本』といわれて、『……』」
「え」
「『灘の生一本』と口は動いているのに聞こえない。すぐに聞こえる程度に繰り返し、そして三度目はもう少し大きく」
「だんだんせりあがる」
「気持ちも盛り上がる。飲んだり食べたりした後の仕草も、まあ大袈裟でわざとらしいものじゃが、演者の人に合っている。世間一般に認めさせるまでは闘いが続く」
「言うことがすごいね」
「現代的くすぐりも加え、いかにも馬るこらしい世界を構築。実にいいな」
「はい、続いては三遊亭時松
「何だか馬るこにだまされてこんなことになった……とか何とか……出し物は『壺算』」
「これもお馴染みのネタ」
「この値引き交渉のやり方が実に説得力がある。素晴らしい出来じゃな。相棒が最初は何だか分からないが、やり取りと聞いていて分かって来るという演出……これは初めて聞いたな」
「色々工夫していますね」
「そう。理解して笑っているのは、その姿を想像するとおかしい。本人は見えないのに、相棒と店の親父で演出するのじゃ。桂枝雀はこの笑う男を演じていたが、ちぐはぐに感じられたな」
「見えない人間が見える面白さですか」
「そう、それから分からないと、なぜって相棒に聞く。これが間抜けでおかしい。時松は両方を入れた訳じゃ」
「すごいですね」
「主人も面白い。分かりかけているのじゃ。違和感を持っていながら、笑う男にいらつき、応対する男が口をはさむので混乱する……このあたりもよく描写されていた」
「3人がそれぞれよく描写されているということですか」
「そう。だから、だまされるのは馬鹿じゃろうが、説得力が生まれる。まあ、時蕎麦外人なんて詐欺にだまされる人もいるから……この手口は『時蕎麦』より『壺算』に近いね」
「はい、ここでお仲入り」
「さあ、こういう席ではお馴染みの口上……」
「え……何です」
「DVDを真ん中に置いて、真打披露のようなDVD披露口上が……」
「また……変なことを」
馬るこが司会で、後の二人が紹介の挨拶、そして手締め」
「締めてもしょうがない」
「まあ、そう言わずに……続いてはDVDに曲を紹介したシンガー・ソング・ライター、ソウイチのライブ」
「あれ……どんどん世界が変わっていきますね」
「活舌が悪いな。まあ、それに合う歌を作っているが……いや、ともかくギターのテクニックが抜群。これは趣味がなくてもはまってしまう」
「そしてトリは林家たけ平
「またもDVDに関するマクラから……馬るこに『儲かるぞ』といわれて同意したのだが、お金は入ってこない。逆にこちらから出した記憶があるという……だから『壺算』を聞いていて何だかこっちが騙されているような気がして腹が立ったとか」
「はは、本音ですねえ」
「そうして『幾代餅』へ。主人公が恋患いをする顔じゃないってのが繰り返されるのはどうかな……せっかくの物語だから、そこそこいい男でいいんじゃないか……まあ、醜男(ぶおとこ)と美女の取り合わせという風に見ると面白いのじゃが……もう一つ余計なくすぐりが興醒めというものも……」
「最後に来て、駄目ですか」
「いやいや、苦情はそれだけ。本人の感情の起伏、親方夫婦の情愛、幾代の気持ちの変化、全てよく出来ていた」
「すごい」
「ということで、予定を30分以上越えて終演。まあ、大満足の会でした」
「はい……それにしても、1週間に3回ですか……すごいパワーですね」
「自分でもそう思うな……土曜日が落語2時間の後、飲み会……一次会だけで5時間」
「どっちがメインだか分からない」
「電車4本を乗り継ぎ。後の3本は全部終電じゃ」
「すごいね……落語カフェは9時半に終わりましたが」
「こちらは3本乗り継ぎ。順調に乗り継げば最後の駅からの最終バスに間に合う」
「え……じゃあ、土曜日はバスが終わっていたんですか」
「もちりん」
「どうするんです」
「2キロくらいじゃから、歩くしかないな」
「よく続きますね」
「息子が呆れていたな。息子は仕事で同じくらいの時間に帰って来る……すごいパワーだねって言っている」
「本当にそう思いますよ」
「まあ、仕事で毎日遅くなるのとは違うからな。遊んでいるのだから」
「確かにそうですが」
「もう一つ、今回分かったのは、素晴らしい落語でパワーをもらっているのじゃ。良かった良かったと思って帰宅すると、足取りも違うぞ」
「そんなものですか」
「明日への活力も湧いてくる。音楽でも落語でも、本当に素晴らしいものに接するということは大切なのじゃなあ」
「疲れは残りませんか」
「え……職場で寝ればいいじゃろう」
「駄目ですって」

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