12月27日 早朝寄席

「さて、今年最後の寄席。上野の早朝寄席から、池袋の二ツ目噺の会へのハシゴ」
「はい。早朝寄席から参りましょう。最初(はな)は入船亭扇里
「『ねずみ』。間の取り方がちょっと……長すぎてだれたり、ここで一息継いで欲しいと思ったりという場面が多かった」
「今一ですか」
「いやいや、良かったな。上出来じゃよ。まだ課題があるということで」
「続いては三遊亭司
「貫禄が出て来たな。出し物は『宗論』。人物の描写がいい」
「今日はほめますね。三遊亭歌太郎
「『転宅』。これもなかなか。泥棒さんの喜怒哀楽がいい。本当に今日はみんないいな……過去にない成果じゃ。客はやっぱりレベルが低いがな」
「また……顰蹙ですよ」
「若手の勉強の場のはずが、普通の寄席と同じ雰囲気になっている。それなら普通の寄席の方が絶対にいい。値段が安いから、この勉強会で済ませているというレベルのファンなのじゃな」
「でも……大衆芸能でしょう」
「それがわしのジレンマなのじゃ。素晴らしい芸をたまには見たい。でも、それが面白いとは限らないのじゃな。面白い上に素晴らしい芸というのはなかなか……」
「難しいね」
「はい、本日はこれぎり」
「あらら……大家さん、トリが残っていますよ」
「あ、そうか。今日のお目当てがこれ」
「はい。鈴々舎馬るこ
「これが何と……何と……なあんとお……」
「すごいね。どうしたんです」
「『死神』じゃ」
「あれ……前日に柳家こみちちゃんが演っていましたね」
「そう。同じTENグループ……これは同じ年に入門したのが落語協会に10人いるという。それが連続で同じネタを取り上げるのじゃ」
「これは期待しますね」
「更に、馬るこなら何かやるじゃろうという期待が湧くなあ」
「何をしました」
「期待通りにやってくれた。何と死神が爺さんではない」
「へえ……昨日のこみちは婆さんの死神」
「そう。イメージはデスノート、しかし性格は馬るこのぶっ飛びキャラ」
「すごい死神ですね」
「大爆笑じゃ。そして最後にほろっとさせて……ううん。見事じゃ」
「でも、随分色々な型になっていますね」
「TENが10人そろって真打になる時、全員が交替でトリ、毎日最後に『死神』というのはどうじゃろう」
「また……大家さんのおかしな発想が」
菊六あたりが本来の型で……軽いノリで明るい死神があったり……想像するだけで面白いぞ」
「はい……とにかく、早朝寄席では信じられないほど、全てが良かった会となりました」
「これから池袋へ参ります」

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