12月6日 早朝寄席

「今日は久し振りに早朝寄席から広小路亭へのハシゴ」
早朝寄席は9月以来ですね」
「今日は古今亭朝太から。出し物は『火焔太鼓』」
「古今亭といえば、志ん生志ん朝……『火焔太鼓』は本場ですかねえ」
「ううん……そう思うのじゃが……」
「何かご不満でも」
「まあ、その志ん生から伝わるそのままという感じで、全く目新しさはなかったような気がする。まあ、それは許せるのじゃが……」
「何かありますか」
「例えば、前半に出てくる家老かな……侍が来て、主人が太鼓の音のお咎めかと思ってごまかす」
「ああ、最初の方にありますね」
「それが、明らかに侍の口調が叱り付ける調子。どなり付けるのじゃ。それで、『太鼓を打ったのをどうのこうの言うのではない』と、商談に入ったとたんに、穏やかないい爺さんという雰囲気になる……このちぐはぐさが気になってしょうがない……そうしてみていると矛盾だらけなのじゃ」
「それが大家さんは気になる」
「わざとらしいメリハリに、客は受けるがな……まあ、今の早朝寄席の客はそのレベルなのじゃろう」
「続いては古今亭菊六
「『権助提灯』。5年前には正直……ううん、本物になるかな……素晴らしい出来。芸は上々」
「芸は……って、何か問題でも」
「羽織が明るい緑で目がちかちかする」
「あら……どうでもいいですね」
「まあ……とにかく本物の片鱗を見せているし、舞台を離れてからの奇行が真面目そうな雰囲気とずれているし……これは名人になるかも知れない」
「どこをほめているんだか」
「まあ、今回の出来で、せっかくだからお土産を渡すことにした」
「続いては三遊亭窓輝
「『質屋蔵』。円窓師匠の息子さんで、目をつぶって聞いていると円窓そっくり……しかし……」
「また何か」
「テンポまで同じ調子……円窓師匠ならいいのじゃろうな。来年真打ちになる若い者が、この調子はいただけないな。夏丸君が演じて勢いを感じていたが、これはどうもねえ……眠くてしょうがなくなった」
「勢いの不足ですか」
「要するにテンポが悪いのじゃよ。夏丸君は鳴り物がないと幽霊は出ないでその前で切るが、今日は鳴り物は無かったのに幽霊は出た」
「貴重ですね」
「それが、何かちぐはぐに感じるのはなぜじゃろうな……幽霊が間抜けなのは、やはり鳴り物入りで演じる方がいいのじゃろうか」
「まあこれからの課題ですね」
「そうしておこう」
「トリは柳亭市江
「早朝寄席初登場。先週は粋歌ちゃんが出たが行けなかった」
「はい、出ていない人はどうでもいい」
「『禁酒番屋』じゃが……ううん、これも……勢いがないなあ」
「はい」
「覚えたのをそのまま口にしているようで、メリハリもなくテンポもない。まあ、初登場なのじゃからこれからなのじゃろう」
「はい、そういうことで」
「これから上野広小路亭へ参ります」

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