12月6日 上野広小路亭

「さあ、早朝寄席に続いて、上野広小路亭へ」
「こちらは恒例ですね」
「はい、まずは前座A
「誰です」
「いやあ……初めてなので2人のうちどちらかじゃろうと思うが……本人が自己紹介をしないので分からない。自分を覚えてもらうというのも大切じゃな」
「はい」
「出し物は『子ほめ』……ううん、本当にまだまだこれからじゃな」
「はい」
「前座もう一人春雨や雷太は珍しい『四人癖』。学生時代に小せんで見て以来じゃな」
「30数年ぶりってことですか」
「そうじゃな。仕草が全てじゃから、録音もない作品」
「で、顔付けに出ている人で、桂夏丸君」
「はい、このページで応援しています。出し物は『一眼国』。大いに受けていたのは珍しい噺だというだけではない。マクラから客の気持ちを見事につかんでいたぞ」
「続いて昔昔亭桃之助君」
「これも前座時代から顔は合わせているが、応援を始めたのは二ツ目になってから。今日は『家見舞い』。こういう汚い噺で、考えてみると汚い台詞が満載なのじゃが、軽く演じるのが何より。客席の方が先に見抜いても笑っているのがいいな」
「鏡味正二郎
「お馴染みの太神楽。手際よくお手玉、五階茶碗、傘」
三遊亭圓馬
「『宮本武蔵の狼退治』。珍しい噺じゃな。駕籠屋が面白いので聞かせ、後半は狼との対峙がドラマチック……釈ネタじゃろうか」
桂南なん
「これまた珍しい『胴斬り』。学生時代に本で読んだが、実は生で聞いたのは初めて。ううん……この人が演ると、妙に現実味が感じられる」
「マンガチックですね」
「そういうことになるかな」
ぴろき
遊三 「はい、お馴染みのギタレレ漫談。いくつか新ネタを披露した。わしの『えー』も受け止めてくれたが……客のわざとらしい『ひひひ』は相手にして欲しくないな……女性客が知らず知らずのうちに同じ笑いをするから『ひひひは僕がやるんです』が生きるのじゃが……それから『反応があるようなないような』の台詞が3回も出たのは、反応がおかしかったのかな」
「仲トリは三遊亭遊三
「『粗忽長屋』。先月はあまりに素晴らしい『お若伊之助』に圧倒されて写真を渡すのを忘れた。さて、この『粗忽長屋』、談志が『主観長屋』と題名を変えて演ったのは周知の通り。自分の死骸を取りに行くということ自体がおかしいのだから、片方が本人を説得するというところに力を入れていた。しかし、こうして聞いていると、まさに『粗忽』であって、全く問題なし。ううん、いい芸じゃ」
蘭「さあ、お仲入りが終わって、食いつきは神田蘭
「こちらもこのブログで応援しています」
「ちょっと不思議な雰囲気を持った娘(こ)ですね」
「元は芸者さんをやっていた」
「え……聞いてませんよ」
「蘭さん、今晩は」
「それ『旦さん』でしょう」
「はい、余計なギャグは捨てて置いて、出し物は先週初演したばかりの『婚活講談』シリーズの完結編。右はそのポスター。殺陣の前まで。時間が分からなくなったようじゃが、目一杯演ってくれたぞ。古い講釈と新しいセンスの融合はすごい」
「ほめていますね」
「とにかく面白い。まあ、今日演じた部分まででも落ちらしいのがあって……まあ、その後どうなるかも推察出来るので、聞いて満足出来る一席ということにもなった」
「で、婚活講談でしたね」
「そうじゃな……誰かもらってくれないかな……」
神田蘭
「はいはい。続いて松旭斎八重子
「お馴染みのマジックプラスワンさんも登場」
八重子

「写真は」
「芸協らくご祭の一コマでございます」
柳亭楽輔
「『時蕎麦』。マクラが長いのでどうかと思っていると、本筋に入ってからはすごくいいテンポ。二つの店を一気に聞かせて対照を明確にした」
三遊亭円輔
「『親子酒』。親のちびちび飲む様子がいい。それで、息子の報告する飲みっぷりが対照的で面白い」
伸治春風亭美由紀
三味線漫談じゃが、12月ということで、忠臣蔵の歌など」
「いいですね。で、トリは桂伸治
「代演で、国立演芸場から歩いてきたというマクラから入り、色々あって、出し物は『片棒』。これもオーソドックスじゃが、伸治師匠らしい雰囲気が決まる。最後の三男……名前が銅蔵(どうぞう)というのも珍しいが……これをあっさり演じて落ちにしたのもいい演出」
「はい、これで全部ですが……」
「すごいな……今一かなって演者が一人もいないじゃないか」
「全部満足ですか」
「うん……いやあ、良かった良かった」

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