市川を行く:その5・手児奈霊神堂

「さて、市川の散策も、いよいよゴールが近付いて来た」
「随分歩きました」
「この後、駅まで1.2キロ歩いたので……実質9キロ以上。中をうろうろなどを計算すると12キロ近くなるかも知れない」
「すごいね」
「前にも報告したが、前週に名古屋で同じく12キロ、翌日約8キロを歩き、今回また……膝の筋を伸ばして、医者通いをすることになる」
「ドラマチックに言うな」
「実はこの後木内ギャラリーへ回る予定だった」
「まだ行くつもりだったの」
「ところが、ここまで来ると、たまたまこの日が手児奈霊神堂のお祭りだったのじゃ」
「ノーチェックだったんですが……すごい偶然ですね」
「それで、お祭りを取材して、ギャラリーはカット。まあ、疲れたからという理由もある」
「はい。それではお祭りの報告と参りましょう」
「まずは昼食
「あれ……グルメ情報ですか」
「お祭りで商店街のラーメン屋が先着何名様か、半額というのでいただいた」
「相変わらずけちだね……写真はもうずっと上に行っちゃってるし……」
「もともと500円という安さ。麺もスープも昔懐かしい味わい。わしゃ好きじゃ。それぞれ★★★★★。ナルト、チャーシュー、メンマ、悪くはないが、いかにも昔風のあまりおいしくない物でもう一つかな★★★★☆
「本当にグルメ情報になっちゃった」
「全体としては上々……ということで、無事食事を終えたので、本日はこれぎり」
「また……食べたら、後を忘れちゃうんだから。霊神堂の紹介がまだでしょ」
「あ、そうか……危うく帰るところだった……すでに左上に出ているのが手児奈霊神堂。『万葉集』でお馴染み、二人の男性からプロポーズされ、選ぶことが出来ずに自害する、悲劇の美女を祀ったもの」
「美女は大変です」
「本当じゃな……皆さんはご安心下さい」
「誰に話しているんです」
「いや、別に……右は境内の碑、
  葛飾の真間の井見れば立ち平し水汲ましけむ手児奈し思ほゆ
 という歌が彫られている」

「続いては彼女が水を汲んだという手児奈の井戸
「はい、さっきの歌に詠まれていますね」

「こちらは真間の継橋。継ぎ橋というのじゃから、昔は板を継いで橋を掛けたものじゃろうな。これも万葉集などによく詠まれている」
「歌の名所ですね」
「歌枕というな。昔は江戸川の河口だったらしい。上田秋成の『雨月物語』の浅茅ヶ宿にも登場する」
「これは怪談噺ですね」

「さて、商店街には屋台も並び……」
「さあ、ラストスパートに入ったな」

「催し物も色々……太鼓が有名なそうじゃが、ちょっと時間が無理。こちらはかっぽれの総踊り」
「はい」
「そして、手児奈を祀っただけに、神輿もかつぐのは女性だけ。男御輿がないのは珍しい」
「はい」
「さて、こうしてすっかり疲れたので、そのたもろもろ……実は東山魁偉美術館まで回ろうと思っていたのを断念」
「まあ、年も年ですからねえ」
「それで、演奏会を聞くことにしたのでございます」
「え……またまた予定外のことを……」
「またまた次のページへ続く」

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