10月11日 柳家ろべえ勉強会「東海道ひとり旅」

「さあ、やっと最後のご報告となりました」
「この日は松戸から市川を散策……10キロ以上歩いたらしく、大家さんは膝の靱帯を伸ばして医者通いを始めることとなります」
「それはともかく、この日の締めくくりが柳家ろべえ君の勉強会『東海道ひとり旅』。今回が3周年。単純計算なら36回目ということになるが、途中色々な事情で出来なかった月があるので実際には32回目……かな」
「はい、まあとにかく記念の会でございます」

ろべえ勉強会1

「そんな訳で、広報がうまく行ったのか、地元の方が多く入って、13人……このところ喜多八師匠の会とぶつかり、常連さんが来なかったから、久し振りのつ離れ」
「よかった良かった」
ろべえ君の1席目は『金明竹』。前半のだるさはもう一つ。それで後半の勢いが対比されればいいのじゃが……まあ、早口の言い立てが素晴らしい」
「課題はあるが、上出来ってことですね」
ろべえ勉強会2「ゲストは柳家さん若。これも同期でTENのメンバーじゃが、実はもう40歳」
「あら……入門が遅かったんですね」
「それで32歳のろべえ君の方が『兄さん』なのじゃから、笑えるな」
「しきたりのきちんとした世界ですからね」
「出し物は『粗忽長屋』。二人の粗忽者を対象的に描こうとして、おっとりした粗忽者を鈍い人間、つまり落ち着いた人物で描く演者が多い」
「まあ、分かりやすいですね」
さん若の人物は、こちらもいかにも粗忽者という感じ。この方が納得……落ち着いた人物では自分の死骸を取りに行かないじゃろう」
「色々演出はあるんでしょうね」
「仲入り後、ろべえ君の2席目。実は、今日は歩き回って疲れ、予定を切り上げて、1時間前に会場入りした」
「そんなに早く」
「まあ、30分待って会場作りでも手伝えば……」
「考えてますねえ」
ろべえ勉強会3「そしたら、ろべえ君が、開演を30分間違えて早く着いた」
「おやおや」
「まあ、お陰で退屈をしないで待つことが出来た」
「話題は」
「師匠の喜多八について……実は録音を整理していたら10席ほどの録音を見付けて……前回の『遊山船』が鳴り物入りだったりとか……」
「色々ありますねえ」
「さて、そこから……という訳でもあるまいが、2席目は『二階ぞめき』」
「ぞめきって……」
「吉原をひやかすこと。親に叱られた若旦那が二階で吉原を想像するという……談志は、二階に吉原を再現する建物を作り、一人芝居でひやかしている。うるさいので声を掛けるよう命じられた小僧が、行くと、若旦那がびっくりして、『ここで逢ったのは親父には黙っていてくれよ』という落ちになる」
「へえ、面白いですね」
「吉原の町並みを噺の中で再現するんだって意気込みを語っていたな」
「そこまで説明するってことは……今日のは違うんですか」
「そう、喜多八からろべえに伝わるのは演出が違い、一人で想像するもの。我慢できなくなった若旦那が逃げ出そうとして親父につかまり、『二階で頭を冷やせと言っただろう』『だから二階でひやかしておりました』という落ちになる」
「なるほど」
「二階での一人語りだけじゃから、遊びに行きたいという台詞と、想像する台詞の交錯が面白いところ……一方単調になってしまう恐れもある」
「で、ろべえ君は」
「上々じゃないかな。『行きてえな』って台詞で現実に戻る、ここで笑いも取れていたから……」
「はい、全体としても上々ということですね」
「この後打上、武蔵野線から常磐線まで、三本の終電を乗り継いで、無事帰った訳でございます」
「大変だね……好きだから」
「はい、以上で市川の旅の読み終わりといたします」

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