7月21日 お江戸日本橋亭

「さて、本日はお江戸日本橋亭へ……2月以来でございます」
「右がちらしですね。春馬さんを中心とする古典落語の会でございます」
「では参りましょう」
「前座は2人。まず春風亭昇也で『子ほめ』。昇太一門は明るいのはいいが、何だか間が悪かったな。途中で考えることが随分あった。4月に同じネタを演ったのはかなり上出来だったのに」
「まあ、出来不出来が大きいのも前座ですから」
「続いて笑福亭羽光で『寄合酒』。これも以前に聞いたはずじゃが……やはり、たどたどしさが残る。テンポがないのじゃ」
「まあ、これから成長するということで」
「そういうこと」
「これから顔付けに載っている人。まずは三笑亭可女次
「『松山鏡』。これもまだこなれていないという雰囲気じゃな。もう一つ乗りは悪いが、勢いを感じさせるのが前座との差というところかな。最後の尼さんは鏡を知っているという演出じゃった」
「そして三遊亭春馬の1席目」
「『岸柳島』。武士のわがままから屑屋の応対……ちょっと軽いかなという感じがある。圓生が演じていたようなサスペンスはなくなるが、スムーズにドラマが進行して落ちも生き生きしている。正直、わしは笑いよりもドラマが欲しいと思ってしまうがな」
桂伸治
「『ちりとてちん』。これはいつも言う通り、東京の『酢豆腐』が上方で改訂されたものを、前の小さんが逆輸入したもの。江戸の小粋さがなくなり、特に落ちが陳腐で聞くに堪えない。しかし、それまでの経緯が面白いので、今では『酢豆腐』より演り手が多いようじゃな」
「で、伸治師匠は」
「もちろん上々。演り手が多いだけに、その人独自の演出か何かがないとねえ……思い切り漫画チックにする人から、いかにも古典風に演じる人まで様々。それがその人と合っているかどうかじゃな。伸治『そういうものがあると聞いてはいる』という、『アル』にアクセントを付けて印象に残した」
「ここでお仲入り。食いつきは三遊亭遊馬
「『かぼちゃ屋』。子どもの頃に小さんを聞いて面白くて仕方がない落語だった」
「子どもにも分かりやすいネタですね」
「それから40年、何人も聞いたが、全部同じ……完成されたネタなんだなと思っていた。遊馬のも大筋は同じだが、ちょっとしたところの仕草や台詞に新しさを感じさせるものがあった」
「進化しているんですね」
「安心しているとどんどん取り残されるな」
「三遊亭遊雀
「『湯屋番』。はっきり、今日の出し物で最高の一席。問題を起こす前から色々、あまり感心したことがなかったが、これはすごかった。マクラからどんどんぶつかって来て、若旦那が軽くて、湯屋の主人や他の客も人物がしっかりしている。一人芝居の締まりのなさから、芝居掛かりへの変化など……いやあ、良かった」
「つづいてここあ
「ちゃんを付けろ……マジックじゃ。お馴染み女性マジシャンの集団スティファニーの一員。今日は昨年の芸協まつりの写真と手土産持参」
「また、私的な話になっているぞ」
「ボードに書いた『ロープ』の文字が本物のロープになるミラクルな世界から始まって、新聞、カードなど、お馴染みのマジックも交えて、最後はリングマジックじゃが、リングを10本以上使うという」
「大変そうですね」
「重いと言っていたな。さぞ腕っ節が強くなったじゃろう……ということで、左は記念写真」
「さあ、トリは春馬の2席目」
「『死神』じゃ。伝わっているのと違う部分がいくつも……女房とは別れないし、子どもは娘だし……最後に命を助けるのも大家の娘で……」
「色々あるんでしょうね」
「まあドラマとしては女房と別れているのじゃろう……とにかく、笑いの連続でガンガン勧めるのがすごい。時間が押して、50分は掛かるのを30分でって言っていたので、ぜひじっくり聞きたいな」
「いい噺はそうですね」
「落ちがほっとしたため息で消すやり方。最後はちゃんと倒れるのだから、火をつなぎ損なって死ぬのでも良かったかな」
「はい、ということで」
「前半はまだ勉強という部分もあったが、全体としては上々じゃないかな。日本橋亭は若手の研鑽を目的としているので、勉強という部分がある方がそれらしくていいな」
「はい。以上でご報告と致します」

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