7月5日 上野広小路亭

「さて、お昼からは、恒例の上野広小路亭へ」
「いつものコースです」
「前座は神田あっぷるちゃん。『真田幸村大阪入城』の一席。大分言い立ても良くなったな。講釈はリズムじゃから、すぐうまくなる」
「上野は鈴本でも、前座の女の子が人気だそうですね」
「やはり実力が伴わないとねえ……もう一人春風亭昇吉で、『牛ほめ』。与太郎が『よっちゃん』とか、新しい台詞もあったな。明るいが聞いていて疲れる。まだまだじゃな。それに、婆さんを牛だと思うくすぐりは不要と感じた」
「さて、顔付けに載っている人ですね。まず春風亭べん強
「『質屋蔵』。最近口元が麻生さんのようにゆがんできたのが気に掛かる。台詞回し、もう一つ物足りないなあ……ただ、仕草がいちいちいい。化け物の出る前で終わった。月末の日本橋亭で続きをやると言っているが……やるかな……」
昔昔亭慎太郎
「『旅行日記』。二人の旅人、店の者とのやりとり……全て可というところ……特に優れた所もないのは、この辺りで出る人にはちょうどいいかな」
檜山うめ吉
三味線と唄。最近声が出るようになって良くなった。風邪ぎみだったのか、喉の調子が良くないようじゃ……まあ、踊りも入ったので、ご祝儀」
三遊亭遊馬
「『大工調べ』。江戸弁の啖呵がが聞き物。頭領がキレる過程がきちんと演じられる。だから面白いのじゃ」
春風亭柳桜
「お馴染み不死身の噺家……今日は『居酒屋』。前の金馬が作ったものを自分流に消化して、いいものに作り上げている」
やなぎ南玉
「これもお馴染みの曲独楽
「仲トリは古今亭壽輔
「これまたお馴染みになっている『親子酒』。親父の酔っていく過程をノーカットで見せるのはこの人しか知らない。親父は5合から6合飲んだのかな……息子は2人で2升5合と言っている。酔態が面白い。文句なし」
「はい、後半は」
「例によって、明日またご報告致します」
「やっぱり」

「さて、昨日ご報告しました、上野広小路亭の続きでございます」
「仲入り後の食いつきは、笑福亭和光
「『荒茶』、これは東京落語ではお馴染み。戦国武者が上方言葉で喋るのは面白い……まあ、師匠の鶴光も演っているし、大阪城が日本の中心だったのじゃから、おかしくはないのじゃろうな。落ちを変えていた」
「続いてぴろき
「お馴染みギタレレ漫談。先日出た新しいCDにサインを入れてもらった。もちろん祝儀をはずむ」
「私的な報告はいいの。三笑亭夢花
「怪しい雰囲気がどうもなじめない人……師匠がそう言っているから間違いない。今日は『堪忍袋』。これも珍しい噺じゃな……前の金馬の録音が残る。教訓的な部分ははぶき、噺の面白さだけで進んだ。怪しさも陰に回り、上出来」
「今日はみんないいですね……雷門助六
「この人は当然……もう出ただけで雰囲気を作ってしまう。いつものように何をやろうか……って探って『浮世床』から将棋と本」
東京太ゆめ子漫才
「出た途端にわしの顔を見付けて『お久し振り』……って、それほどでもないのじゃが……今日はぼけた京太師匠が急にまともな演説を始めたり……毎回色々思いがけないことがあるな。もちろん、ご祝儀」
「私的なことはいいの。さあ、トリは瀧川鯉朝
「今日は古典の『夏泥』。ずっーと泥棒との静かなやりとり……疲れたお客さんが随分こっくりしていたが……それでいて聞いていて面白い。新作でも古典でも、その中でも型破りだったり、本格派だったり……すごい実力をひそめている」
「今日も不出来がありませんね」
「うん……早朝寄席から6時間半、ほぼ全部が上々というのも珍しいな。これなら、また来ようという気にさせてくれる」
「また行きますか」
「今年も目標は月2回の24回……この席が、ちょうどその24回目でございます」
「じゃあ、もう行かない」
「とんでもない……今月まだあと4つは行くぞ。体調が良ければもっと……」
「どうなりますやら……」
「また、その都度ご報告申し上げます」

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