6月13日 ろべえ勉強会「東海道ひとり旅」

「これもすっかりお馴染みになった、恒例の会」
「はい」
「市川の広報誌に載って、地元の方が少し増えているのが良かった」
「そうですか」
「でもまだまだ……この会場なら30人以上集めないとねえ」
「期待は大きいですね」
「まあ、最初の頃は5,6人でもよく我慢して来てくれているという世界だった。今はそれだけ呼べる力量を付けてきているぞ」
「ほめていますね」
「さあ、今日の最初(はな)はろべえ君の一席目で『だくだく』。右の絵は参考」
「何ですか」
「これは前日の『だまし絵』展の一作。よく見るとおかしいところがある」
「はあ……あ、上の紐が切れている」
「紐ではないが……これは表装から後の壁まで、全てが一枚の紙に描かれた絵なのじゃ」
「なるほど」
「『だくだく』を聞いて、こんな所に絵の名人が隠れていたかと驚いた次第」
「落語の世界には何でもいますから」
「右の絵は何日もかけて描いたのじゃろうな。そこはさすがに落語、瞬く間に書き上げてしまう」
「絵の評価ですか」
「いやいや……その描く様子。同じような台詞の連続なのに、飽きさせない。それから泥棒の登場からは仕草が更に多くなり……とにかく見応えのある一席だった」
「はい」
「今日のゲストは三遊亭時松。出し物は『二十四孝』。鯉と筍と蚊にしぼって要領よくまとまっている。鯉を捕りに裏の竹藪へ……というくだりなど、もっと笑わせていいのじゃないかな……欲の無さに好感を持てるな」
「変な評価」
「仲入り後は、春亭右乃香寄席文字
「芸で見せる寄席文字とは珍しいですね」
「リクエストされた文字をその場で書く。最初に『徳』を書いて、プレゼントと言うが、皆さん遠慮されて手を挙げない。盛り上げるためにわしがもらったら、後はどんどんリクエストが出て、最後はお客さんの名前を書いて完了」
「はい、トリはろべえ君の2席目ですね」
「何と『死神』じゃ。死神の爺さんに重みが不足かな。しかし主人公がいかにも江戸の軽い人間で、おかしかった。呪文が『清くけだるく元気良く』だったが、結局省略した。全部それで行っても面白いかも」
『清くけだるく……』って」
「ろべえ君のキャッチフレーズ。さて、時間の都合で、零落する部分は省略され、一気にラストへ……やはり何としても金が欲しいという説得力には半ばカットはもったいないかな……しかし、最後に子どもの寿命と取り替えるというのを拒否して、死神が『人間らしい心も残っているな』という台詞は面白かった。金への執着心がドラマになりそうじゃな」
「じゃあ、出来は」
「うん、合格じゃ。このレベルで演じてくれれば、地元の人もまた来ようという気持ちになるじゃろうな」
「広報誌に載って、地元アピールのチャンスだった訳ですね」
「さて、これから反省会……という名目の飲み会が4時間に渡って繰り広げられました」
「あれ、前夜も打上が……」
「前日は5時間、合計9時間か……大変じゃな」
「他人事みたいに……」
「これは危ないぞ」
「飲み過ぎですね」
「いや、これだけ飲んでいるのに、翌日に残らない……体がどうかしているようじゃ」
「いよいよ末期的ですね」
「そういうことで、本日はこれぎり」

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