5月17日 ろべえ・夏丸・仙花勉強会

「今日はお馴染み、三人の勉強会
「今月も行きましたか」
「そう。一昨年関東に戻ってからは9回のうち8回参加できたが、昨年は12回のうち5回だけ」
「で、今年も2回目……お馴染みじゃなくなってきていますよ」
「まあ、来月行ければ半々になる……因みに来月は7日、日曜日の開催でございます」
「皆様もぜひ」
「ということで、本日はこれぎり……」
「また……大家さん、中身の報告が……」
「あ、そうか……忘れちゃった」
「しょうがないね」
「さて、最初(はな)は桂夏丸君。前座噺の『道灌』を披露した」
「前座噺ですか……この間のろべえ君も『子ほめ』を演っていましたね」
「そう、その時も言ったが、さすがに二ツ目になったら一味違うというものを見せなければならない」
「難しいですね」
「この『道灌』は、春風亭柳昇が初高座で演じたが、誰もクスリとも笑わず、とんでもない道を選んでしまったなと語っていた噺なのじゃ」
「へえ」
「夏丸君のはテンポがいいな。さすがに笑わせるツボは心得ているようじゃ。まあ、前座噺じゃから、人物描写はいらないというのが定番」
「それがいいテンポで聴かせた」
「結果としてはそうじゃな」
「結果って……」
「これは後でもう一席あるから、一緒に考えよう」
「続いて鏡味仙花ちゃん」
「いや、この前に鈴本に出ていて、やっと着いたばかり。それで柳家ろべえ君が登場」
「え……何を演ったんです」
「先日マクラで話したものと同じ。阿修羅展の報告と手拭いの自慢」
「あらら」
「まあ時間つなぎとしては面白い。それでいよいよ仙花ちゃんが登場」
「今日は曲芸ですか。三味線か笛……」
「いや、漫談
「え」
「これから新宿の末廣で膝(ひざ)を勤めなければならないそうじゃ。それで、毎年お馴染みのゴールデンウィークの忙しさを話しておしまい」
「あらら」
「まあ、前回みんなの前で恥をかいた笛が、この連休では何とかなったそうじゃ」
「まあ、良かったですね」
「仲入り後は夏丸君の2席目ですね」
「今度は『粗忽長屋』。これもいいテンポといえばいいが、ちょっと急ぎすぎという印象。まめでそそっかしい男はこれでいいと思うが、無精でそそっかしい男はもう少しのんびりしていてもいいのじゃないかな」
「さっき言っていた人物描写じゃな。正直言って、みんな同じ調子なのじゃ。人物描写に輝きを感じていたので……これは何か考えることがあるのか……いずれにせよ、まだまだ勉強という世界じゃな」
「勉強会だから課題があって当然ということですね……さて、トリはろべえ君ですが」
「出し物は『強情灸』……これも全く同じ、課題満載じゃな」
「どういうことです」
「最初の男が灸を据えに行ったが、その灸を据える男がいかにも怪しい。これが笑いを呼んだ。そして、後の男が灸を据えるが、これがまた汗だくの熱演」
「良かったんですね」
「いや……わしはどうも……」
「駄目ですか」
「同じろべえ君が『やかんなめ』では汗だくになって演じる姿に好感を持てた。だが、この噺は……何かが違うな……」
「何でしょう」
「最初の灸を据える男なのじゃろうな……いかにも作られた人物で、親しみは持てない。一生懸命演じているろべえ君と違う世界なのじゃな……これは八人芸といって、芝居ではいかにその人物に成りきるかというのに苦心するのじゃが、落語の場合はどんな人物を演じてもろべえ君でなければならないという……その芸術性の違いなのかも知れない」
「……また、訳の分からない説明を……」
「つまり、夏丸君が描写に物足りなさを感じたのに対し、ろべえ君のは作り過ぎに疑問を感じたということじゃ」
「どうなるのでしょう」
「いや、これを通して自分に合うものを作り出して行けば良い……これは勉強会なのじゃ。色々やって、色々見つけ出してほしいな」
「はい、以上ですね」
「いや、仙花ちゃんが短すぎたので、15分も余った。そこで……」
「特別の席ですか」
ろべえ君のストリップ
「え……」
「その場で脱いで、夏丸君が着物の畳み方を色々見せた」
「これも面白いですね」
「で、もう一回着る……5分で準備が出来るという」
「すごいですね」
「で、また脱いで……」
「また着物を畳むんですか」
「今度は立ったまま……畳半畳あれば畳めるという……これも技術じゃな」
「芸術的ですね」
古今亭菊之丞師匠が着物会館で、同じように生着替えと畳み方を見せて、菊六君が混乱したのを思い出してしまった」
「いいですね」
「さて、若い者の素晴らしさは、課題を与えれば次回必ず何らかの改善を見せること。きっと何かを起こすと思います。皆様も是非」
「来月7日の勉強会へお出で下さい」
「え……お前なぜ来月が7日だと知っている」
「最初に話していますよ……ほら↑」
「ううん……噺というのは奥が深いな」
「それほどのことじゃない」
「はい、本日は本当にこれぎり」

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