4月8日 上野広小路亭

「さて、今日は久し振りに上野広小路亭へ」
「久し振りって、毎月行っていますよ」
「前座は瀧川鯉ちゃ
「他人(ひと)の話を聞いていないね」
「出し物は『新聞記事』。前座は評価に値しないが、この頃の芸協の前座はかなりいいぞ」
「若手が頑張っているってことですか」
「そう。もう一人春風亭昇吉もよかった。『たらちね』をテンポ良く演じた」
「さて、顔付けに載っている人ですね。橘ノ円満
「そう、こ奴が前座時代にはほとんど取るものがなかった。それが二ツ目になって音曲噺を演るとかなり行ける。もっと個性が出るようになるともっと良くなるじゃろう」
「で、今日の出し物は」
「『金玉火鉢』」
「え、これって……『金明竹』の前半ですね」
「そうじゃ。芸協ではほとんど『金明竹』まで続ける。前半だけというのは珍しいな。原作では親父が『疝気でございます』と断るが、火鉢を借りに来た人に『疝気で』と断ってしまう。HP本店の『金玉火鉢』を参照」
「さりげなく、堂々と宣伝しているな」
「それが分かりにくいから代えていた。猫の爪を切ったことを伏線に、『猫をかぶっている』という……これも悪くないぞ」
「続いて瀧川鯉橋
「『家見舞』、なぜか多く取り上げられる演目。汚くてひどい作品なのに……ただ芸協ではみんな明るく品良く演じてくれるから、意外に捨てがたい作品になっている」
「はい。宮田章司
売り声。リクエストでいくつか。わしも『朝顔』をリクエストした」
三笑亭夢花
「怪しい男じゃ。今回『火焔太鼓』を取り上げた。勢いで行くが、自分のものになっていないという印象。ポイントがないという感じじゃな」
橘ノ円馬
「『嵯峨の夜桜』という珍しいもの。講釈ネタじゃろう」
「Wモアモア」
「お馴染みの漫才じゃな。わしの顔を覚えてくれたようで、ネタにされてしまった」
「仲トリは古今亭寿輔
「最近よく取り上げている『親子酒』。親父が飲むのを全部描写。普通は飲み始めを見せて、途中をカット、出来上がったのを見せる。それが、この師匠はカット無しで全てを見せる」
「すごいですね」
「大きい器で3杯じゃから、5、6合飲んだのじゃろう。ちょうどいい酔い具合じゃな」
「なるほど」
「とにかく着物が派手なのに言葉は暗い、顔を見ると変質者……」
「ひどいね」
「『文七元結』とこの『親子酒』は素晴らしいものになるな」
「仲入り後のくいつきは、日向ひまわり
「きりっとした口調の女性講釈、昨年11月の写真をやっとお渡しした。柏落語会で、その時のメンバー、円満円馬も今日は競演」
「私的なことはいいの」
「出し物は『木村長門守』。いい口調じゃな」
「続いてぴろき
「これももちろん土産持参。お馴染みギタレレ漫談」
桂幸丸
「不思議な高座になってしまった。『野口英世物語』にしようとしたらしいが、『ハワイアンセンター物語』になり、『昭和歌謡史』になって……まあ、どれともつかないもので終わった」
「面白いですね」
「まあ、大いに受けたからいいか」
三遊亭圓輔
「『短命』。いかにも古典落語でございますという調子がいい。変な言い方だが、最近新しい雰囲気のを耳にしたので、かえって新鮮だった」
松乃家扇鶴
三味線漫談。いつも言う通り、声が上がるのが……でも慣れちゃったのか、最近は聞けるのが不思議じゃな」
「さあ、トリは桂歌春
「『城木屋』じゃった」
「あれ、先日桂夏丸君が演じていましたね」
「同じ流れ、歌丸系統のもので、くすぐりまで同じなのは面白いな。これから演じる人が増えると、少しずつ個性的な内容が入って来るのじゃろう」
「はい、そういうことで……」
「今一という演者が一人もいない、素晴らしい一日でございました」

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