３月１５日 早朝寄席
「さて、今日はあちこち行かなければならず、目的が４つ」
「大変ですね」
「まずは上野鈴本の早朝寄席。柳家ろべえ君を応援に」
「はい、トップバッターは」
「そのろべえ君で『欠伸指南』。なかなか面白かったな。欠伸なんぞを習いに行こうという動機、その動機が消えた途端に、なかなか面白いぞってその気になる経緯。先生の名前も欠伸斎長息（けっしんさいちょうそく）と洒落ている」
「良かったんですね。次は」
「桂笑生。実はこの日の夜、ろべえ君恒例の市川行徳の勉強会があって、ゲストが彼」
「あらら……ハシゴですか」
「それが夜は仕事で行けなかった」
「はい、残念でした」
「という訳で、今日はこれまで」
「また、大家さん、笑生の一席は」
「あ、そうか……『粗忽の釘』。落ち着こうとする場面が、妙に落ち着くのがおかしかった。本当に落ち着いた人物に見えるから、相手をしている人からは変な人なのじゃな。もちろん、落ち着こうとしても落ち着けないのもおかしい。演じる人が、自分に合う人物を作るのじゃな」
「はい、これも良かった」
「三人目は三遊亭亜郎で『ちりとてちん』。最初の人物が『お呼び立ていただいてありがとう』と言って違和感を感じたが……今日のは全くいただけなかった。客席はすごい拍手だが、なぜそこまでわざとらしくしないと駄目なのって感じ。久し振りに後ろを向いていた」
「あら、最近なかったですね」
「最初の人物はオカマ、相手は『おいしそうに食べてくれる』と言うが、わざとらしくて鼻につく。後の人物は『目をつぶって、鼻をつまんで』食べるはずなのに、いざ口にする場面ではどちらもしないし……まあひどい。倒れてのたうち回るから受けるのだろうが……正直見ていられない」
「まあ、色々挑戦する会ですから」
「それでトリは春風亭一左で『家見舞』。口調がこなれていないな。『バーカ』という伸ばしが何度も出てくるが、違和感を感じる。所帯を持ったお祝いだというのに、店の方からこんな瓶を勧めるのは……どうも納得が行かない」
「さあ、引き続き広小路亭へ参りましょう」
「はい、それは次のページで」