3月12日 品格のある落語会

「さて、この日は神保町のらくごカフェで、桂夏丸君の一人会が行われた」
「はい、大家さんとは古い馴染みで」
「病気で倒れた後、リハビリを兼ねて落語や音楽に出掛けるようになった。今のように月にいくつもなんてとんでもないことで、毎月1つがやっと」
「でしたねえ」
「それで上野広小路亭に通うようになったが、そこで前座で登場したのが夏丸君」
「大家さんと夏丸君は寄席デビューと一緒ってことですか」
「まあ、わしは復帰じゃが……それで、勉強会などには行ってやるのじゃが、今回は初めての一人会」
「若いのに、一人では大変でしょう」
「このらくごカフェでは最年少記録、しかも芸協で会を開くのも彼が最初」
「初物はいいですねえ」
「そういうことじゃが、夜遅い会なので十分間に合うかと思ったが、仕事を終えて行くと完璧遅刻」
「あらら」
「マクラに入っていたので、そっと入場。出し物は『城木屋』。歌丸師匠で聞いたもので、その時は、経緯を語る部分は今一だったが、最後の宿場尽くしでドッと盛り上がった」
「難しい話なんですね」
「そう。それを夏丸君は途中に戻りマクラを入れたり、メリハリを付けて語り込んだ……まあ、これも歌丸師匠譲りなのかも知れないが……ともかく素晴らしい出来じゃ」
「一席目は大成功ですね……二席目は」
歌謡ショー
「え……」
「懐メロばかりを集めたショーで、落語のネタ意外の歌を聴くのは3回目じゃな」
「不思議な会ですね」
「仲入りの後、『もう半分』」
「1月の会で演じていましたね」
「写真はその時のもの。それにしても、1月半の間はすごいな」
「どういうことです」
「若い者はとてつもなく成長するのじゃ。桁違いにレベルが上がっている。後で確認したが、やはり師匠からのものだったが、酒を飲む場面の面白さ。爺さんと酒屋夫婦の描写もお見事」
「色々演出を考えなければならないんですね」
「後半は地で語る部分が多くなる。そこにもドラマが生じる」
「ドラマになったということは、いい出来ということですね」
「良かった。それにしても、こんな若い噺家の初めての一人会が、『城木屋』と『もう半分』とは、すごい取り合わせじゃな」
「『歌謡ショー』もありましたよ」
「これもすごい……その図々しさが……まあ、そういう訳で、打上に参加して、無事一日を終えたのでございます」

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