2月22日 早朝寄席

「さあ、今日はまず上野鈴本の早朝寄席へ」
「今日のお目当ては」
天どん君と馬治君の応援のつもりだったが、馬治君は代演じゃった」
「はい、では今日の出演者に参りましょう」
「まずは古今亭ちよりん。土産は馬治君のを回そうと思ったが、すれ違いじゃった」
「出し物は」
「『本膳』。珍しいネタじゃな。やはりテンポが悪いな。顔見知りなのじゃから応援したいが、まだまだじゃ」
「はい、次は柳家喬の字
「見台を置いて、珍しいなと思ったが、出し物は『蟇の油
ずっと口上を立て膝で……膝元が見苦しくならないように見台を置いたのじゃろうな」
「効果がありましたか」
「ううん、どうじゃろうか……見慣れていないせいかも知れないが、見ていて疲れる」
「まあ、挑戦なのでしょうね」
「口調はいいのじゃから、余計な世界に気を遣わせないでほしいな」
「それが結論ですか。桂才紫
「いい声をしているな。『宮戸川』、戸を開けるまでの伯父さんの様子も適切で、良かったが……」
「何か引っかかっていますね」
「伯父さんの妻であるのが……婆さんと呼ばれてはいるが、幾つなのじゃろう」
「え……さあ……」
「主人公は21歳……その伯父さんは……婆さんと呼んでいるから相当な年齢なのじゃろうな。伯父さんと伯母さんは『いまだに3つ違う』というくすぐりがあるから……しかし、主人公の半七が家に入った後は急に若く感じられるようになった」
「難しいですね……普通に考えると親の兄弟ですから50歳前後ですか」
「それでも昔なら『婆さん』になり得るか……しかし、演じられた婆さんはもっと年上に見えるなあ}
「ううん……どうでしょう」
「年の離れた兄弟もあるがなあ……サザエさんを見ながら悩んでいる」
「はい、まあ、先に行きましょうか」
「トリは三遊亭天どん君。いつもトリにされると言っていた」
「実力があるんですね」
「いや、この後に高座に上がるのが嫌なのじゃ」
「あらら」
「それで、トリにされるが、前の人が長々演って、15分くらいで終わるようにされている」
「どういうことです」
「それ以上演ると、滅茶苦茶になるって……」
「ひどいですね」
「それが、今日は30分以上残って」
「またも、あらら」
「ぐずぐずした末、何と『子別れ』を演じ始めた」
「ええ……またまた、あらら」
「間がいいぞ。ちょっとしたところで間を取ると、例えば円生と同じ台詞なのに、客席ではドッと受ける部分が随分あった」
「それは珍しいですね」
「実は泣くシーンが駄目なのじゃ。だから、子供が泣くシーンもさっと笑いに切り替え、最後の感動的なシーンも涙は見せずに……」
「じゃあ、物足りないですか」
「いや、逆に驚かされた……昨年真打に昇進した歌奴が感動的な『子別れ』を演じていた。天どんは全く逆の方向を向いているのじゃ。自分に合った世界として消化出来るのではないか……そんな新しい『子別れ』の世界を作り出しているのじゃ」
「良かったんですか」
「うん……面白かった」
「すると、今日は」
「かなりの上出来じゃな……しかし、いつも言う通り、客層は変わっている。ありきたりのギャグに大爆笑が起こり、今一の出来でもドッと受けるのはなあ……演じている間もテーブルがバタンバタンと鳴るのはどういうことじゃろう。定席ならともかく、若手の勉強会では飲み食いもしないし、テーブルはいらないじゃろう……」
「また……客への苦情ですか」
「そうじゃ……いつも言うが、こんな会じゃから、若手に期待する人が来る。50人入ればびっくりの大入のはずなのに、今は150人が当たり前……何をしに来ているのか分からない客が多いのは確かじゃ」
「笑いに来ている」
「若手の勉強会で満足するようでは相当の低レベルじゃぞ……じゃが、それが正解かも知れない……寂しいなあ」
「はい、寂しいけれども」
「満足の席でございました」
「この後、パズルショップ『torito』で平野さんのイベントでございます」

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