2月16日 立川流広小路寄席

「そういう訳で……」
「どういう訳」
「お仕事はまあ適当に切り上げて」
「いつも適当ですがねえ……会話も適当だし……」
「昼には上野へ行けたので、そのまま立川流広小路寄席へ」
「行きましたか」
「行きましたよ」
「ええ、ここで解説。大家さんは単身赴任で岡山県津山市へ行っておりまして、そこで歩いて3分のところにあった作陽高校と深い関係を持ってしまったのです」
「関係といっても男と女の関係ではございません」
「分かってますよ。その学校の卒業生である、立川志の吉君の応援です」
「そういうこと。さて、前座は松幸……残らず立川なので、亭号は省略致します」
「はい、出し物は」
「『真田小僧』の前半。可愛気のあるガキなのが良かった。それに、親父は懐から財布を出し、ガキはもらった銭を帯の間にはさむ。こういう細かいところはいいなあ」
「上々ですか」
「まあ、ちょっとした部分には揚げ足を取られるところがあるのが、まだ前座ということなのじゃろうな。落ちも『お前も1銭出しねえ』でいいのに、それを冗談落ちにするのは疑問じゃな」
「はい、顔付けに乗っているのは吉幸からですね」
「『短命』じゃ。若い男が妙に明るく、軽くて……いい感じの噺にしていたな。それに、普通は二番目の夫が丈夫一式の『水瓶に落っこったおまんまつぶ』なのじゃが、健康で色黒で江戸前のいい男だというのは初めて聞いた」
「色々あるのでしょうがね」
「それに、女房がいい女なのじゃ」
「え……それじゃあ落ちになりませんね」
「うん……だから、一般的なのが正しいのじゃろうな……まあ、落ちがあるので顔はそうなのじゃが、気の利く実にいい女房じゃった。落ちがあっさり過ぎたのは、その辺りの物足りなさも感じたのかな」
志ら乃
「マクラで『三人の樵(きこり)』から入って『親子酒』。後ろや前に手を付く酔態がなかなか面白かった」
「さあ、今日のお目当て、志の吉君」
「『持参金』じゃ。これも、女がひどいというのが定番じゃが、それを気遣いをするいい女にして……だから手を出したがということで……説得力のある形を作っている。上方版はとにかくひどい女でしかないのじゃが、とにかく容姿はともかく兄貴分も手を出すことに納得させた。良かったぞ」
談之助
「『談志が死んだ』。漫談じゃな」
「仲トリは龍志
「『天災』。乱暴者である主人公が、意外に落ち着いた雰囲気を持っていて……みんな、品があるのがいいな」
「さて、食いつきは志遊
「『寄合酒』の前半。みんなが食材を集めたところまで。これといって山場もないが、決して悪くはない。腹を洗う場面と、食材持ち寄りがつながったり……そういう部分が良かったのじゃろうな」
志雲
「『新築祝い』。東京の『牛ほめ』を上方の演出で……って、もともと東京落語なのじゃが、すでに伯父さんの家でひどいことを言っていたというのが上方風で面白いが……やはり、ちょっとくどくなるな。牛は出て来ず、台所の穴だけで終わった。落ちは伯父さんが『お前に教わるとは、俺の目が節穴だった』と言うので秋葉様のお札を張るというもの」
左談次
「スポーツ談義をたっぷりやって、『大安売』。ただし、昔のスタイルで、巡業の成績を説明しただけ。中に古いネタがあって、楽屋から思わず笑い声が聞こえてきたのはおかしかった」
「さあ、トリは文字助
「前のをマクラ扱いして、相撲の話題をふくらまし、『雷電初土俵』……ちょっとど忘れがあったり、言葉が詰まる部分があったり……テンポが良ければもっと良かったかな……」
「でも上々ということで」
「今日は例の中川が酔っぱらったような姿で世界の顰蹙を買い、風邪薬のせいにしたという話題が多かった」
「ニュースがすぐ出てくるんですね」
「ほら、立川談志が、沖縄開発庁政務次官を36日でやめたという経験があるのじゃ」
「ああ聞いたことがあります」
「それが、前夜同級生と逢って飲んだから……二日酔いの状態で会見をした責任を取ったのじゃ」
「へえ」
「あの中川のような醜態ではないが、記者の中で気付いた人がいたため、責任を取って……」
「なるほど、打ってつけのネタですね」
「もう一つ、平日にも関わらずよく来たってんで、よほど余裕があるか、家に居られないか……というのをみんなが繰り返したのもなかなか……いやあ、上々の席じゃった」
「はい、本日はこれまで」

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