1月25日 夏丸・蘭の会(サマー・ランド)

「さあ、今日出掛けたメインは、桂夏丸君と神田蘭ちゃんによる勉強会」
「二人ともお馴染みになりましたが」
「夏君は2003年のデビューから見てきた……って実は初チェックしているのは7月13日の高座。認めたのが11月2日、翌年から差し入れをするようになりました」
「丸5年を過ぎたということですね」
「2005年には柳家ろべえ(当時は小たま)君と勉強会を始めたが、わしはその年から岡山へ単身赴任、9月に上京した時に初めて参加した」
「それからは概ね常連ですね」
「毎月行われているが、関東に戻った2007年には3分の2に、昨年は日程が合わず2分の1しか参加出来なかった」
「まあ、贔屓になったからには行ってやらないとね」
「さて、もう一人、ちゃんも運命的な出会いが……」
「そうなんですか」
「父が亡くなる直前、見舞いに戻ったので、先ほどの勉強会に参加出来たのじゃが、その時にたまたまゲストで来ていたのが彼女」
「へえ」
「だから親父が悪くなかったら、多分寄席で聞いても贔屓にはならなかったと思う」
「運命ですか」
「そんな訳で、講談も身を入れて聞くようになったという訳じゃ。因みに、夏丸君は一昨年9月に二ツ目昇進、ちゃんは昨年7月に二ツ目昇進したばかり。つまり、芸協の二ツ目で、現在一番下がちゃん、二番目が夏丸君なのじゃ」
「へえ」
「さて、本日はちゃんから始める予定だったのに、開演2分前に『原稿が完成していないから代わってェ』っておねだりされ、夏丸君がトップに」
「アクシデントですか」
「台本が完成していなかったとか」
「いい加減ですね」
「それで夏丸君の『青い鳥』から。これは三遊亭円右師匠の作品。16人くらいのお客さんという見積もりで始めたら、何と50人も入ったろうか……大勢来てもらったというので気合いも入った」
「上出来ですね」
「慣れているネタじゃからな……後半に期待しよう」
「はい、続いてちゃんですか」
「出し物は『伊達家鬼夫婦』……前座時代に演っていたが、前座は時間が短いので最後まで演じたことがないとか……今日はもちろん最後までたっぷり」
「……前座時代から演っていたネタですか」
「そうじゃ」
「原稿が完成していないから、夏丸君に代わったんですよね」
「そうじゃ」
「前から演っていたネタなのに、なぜ原稿が完成していないんです」
「それは、台詞のどこに『チェンジ』を入れるかに悩んでいたのじゃ」
「……それだけなんですか」
「芸術のためには、わずかな部分にも気遣いが必要なのじゃ」
「それで、いかがでした」
夏丸君と同じじゃ。慣れたネタで、若さと勢いを感じさせる一席。前半の一席ずつで、
客席もいい雰囲気になったぞ」
「さて、後半は……やはり夏丸君からですか」
「いや、ちゃんの二席目で『正岡子規』。これは台本を置いたまま」
「まだこなれていないということですか」
「途中の大事な台詞は頭に入っているようでよどみがない。後で子規のエピソードを2つ3つ教えてやったので、次に演じる時には加わるじゃろう」
「これから育つ作品ですね」
「さて、トリになった夏丸君、何と『もう半分』に挑戦」
「聞いたことのないタイトルです」
「珍しい作品じゃな。わしが子供の頃に先代の今輔が演じていた。客席で、歌丸口調があるななんて噂話をしたが、ふと思い出したのは、橘ノ圓師匠が5、6年前に演じたのを聞いている。そちらの系列かな」
「分かりませんか」
「これは聞いてみないとな……最近では昇太君も演じていたはずじゃ」
「珍しい作品ということですね」
「後引き上戸の老人が『もう半分』を繰り返してつい飲んでしまう。それが金を忘れて、店の夫婦が猫ばばし、老人は自殺してしまう。後は怪談噺」
「怪談噺に挑戦ですか」
「前半の飲む場面では軽い笑いも起こり、半ばからは息を呑んで聞く……となれば本物じゃが、まだまだ。かなり素晴らしい出来とほめておくが、ドラマとして仕上がって行かないとな」
「まだまだですね」
「しかし、若いのじゃから、年を取るだけでも重みが出てもっとよくなる。それに磨く部分がいくらもあるのだから……二人がこれだけのものをぶつけて来たら、二回目三回目もあるじゃろう。そういう期待をもたせる勉強会だった」
「はい、更なる成長に期待しましょう」

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