12月25日 お江戸日本橋亭

「さて、いよいよ今年最後の寄席」
「あれ、年末は」
「残念なことに、行きたい会が仕事と重なってしまった」
「仕事優先なんて、信じられませんね」
「本日は日本橋亭で、古典落語と踊りの会。客席には踊りの師匠や仲間も来ていたが……」
「また、『が』ですか……何かありましたね」
「あった。ひどい客がいて、ずっと演者に話しかける。困ったものじゃ」
「そういう人がいるんですね」
「自分が楽しければいいということじゃな。陽子師匠に止められたが……まともな人ではないから、そんなことではやめない」
「しょうがないですね」
「さて、前座は神田松之丞
講談ですね」
「宮本武蔵伝から、佐々木巌流との戦いの前の部分。宿での噂から、船の乗り合いへ。これが三十石の乗り合いのような話になる」
「で、出来は」
「まあ前座じゃから……講談は言い立てじゃから、慣れていれば十分聞ける」
「前座がもう一人ですか」
春風亭昇吉の『桃太郎』。師匠譲りの明るい調子といいテンポ。これでメリハリが出ればもっと安心して見ていらえる」
「はい、それでは顔付けに載っている人。まず春風亭昇松」
「『壺算』。3人の人物がかなり個性的で面白い」
雷門花助
「『紋三郎稲荷』。松戸の人じゃから、松戸あたりの描写が詳しい。自分の知識を加えることで、生きた噺になっているな。ここで踊り、じょぎに続いて花助と2人踊り」
桂歌助の1席目」
「『野ざらし』。若手が威勢のいい主人公を演じるが、こうした中堅の落ち着いた世界もいい。周囲の人の反応がいいテンポ、間がいいというのが良く分かる」
「本来ならここで仲入りでしょうが」
神田陽子講談と踊り」
「すると仲入り後は神田京子
「これも講談。先日の写真を持っていってやった」
「さて、トリは歌助の2席目」
「『蒟蒻問答』。前半を端折って、噺の中で坊主になった経緯を説明、この噺は坊主との問答からわっと盛り上がる。しかし、問答が仏教の理に落ちてしまうと……難しい作品じゃが、坊主の台詞もちゃんと経文につながるものだったし、後の問答も見事。よかった。そして、踊りは『酒と女』」
「無事終演ですね」
「かくて今年最後の寄席のご報告でございました」

inserted by FC2 system