11月16日 早朝寄席

「さて、昨日は中学校の同窓会。仲間を引き連れて上野の早朝寄席へ」
「前の夜は随分飲んだんでしょう」
「そうじゃな、昼から飲んで、2時間ほど仮眠、夕方から本格的に飲み初めて丸6時間飲んだ」
「大丈夫ですか」
「連れて行った仲間、半分は熟睡していたな」
「いいんですか」
「ううん……まあ、この寄席自体に寝てしまってもしかたない部分が感じられた」
「あら」
「まずは客がひどくなったな」
「前の時もそんなことを言ってましたね」
「わしは客が10数人というのが当たり前の時代から見ているが、本当に落語の好きな客が集まっていたと思う」
「今は」
「前回のように普通の真面目なところに爆笑したり、どうも質がおかしい。今日はもっとひどいのがいて、落語家が演じている間、ガサガサ音を立てて他の落語会のちらしを見ている奴もいる」
「これは嫌がらせなんでしょうね」
「そうじゃな。まあ、出来が良くないから、そうするのじゃろうが……」
「そうですか」
「しかし、そんな嫌がらせをするほどひどくも無かったなあ……」
「そうですか。順に行きましょう」
遊一の『ねずみ』、人物描写が甘いな。それに、宿の主人が標準語なのに、町の人は田舎言葉……まあ、この人は家まで11町と言っている」
「どのくらいです」
「1町が約110m、1.21キロか」
「それで随分言葉が代わるんですね」
「まあ、そういう違和感があった」
「二人目は」
左吉の『代書屋』。客が適当男なのじゃが、テンションだけで進んで……わしは一つも笑えなかった」
「駄目ですか」
「ううん、典型的な人物で甘さを感じる」
「一人目も二人目も甘いんですね……だから嫌がらせが……」
「それほどひどいということでもないのじゃが……まあ、マクラと本筋に入ってからの説明に矛盾があったりしたが……嫌がらせをするほどとは思えないのじゃが……」
「続いては」
わか馬の『金明竹』、これはなかなか。(与太郎ではなく)松公の描写、伯父さんへの応対、独自のものもあって、面白かった」
「やっと満足の行く一席が出ましたね」
「さっきの客もガサガサをやめたから、やっぱり嫌がらせだったのじゃろうな」
「そうですか」
「因みに、DVDコレクション『落語百席』第4巻では菊之丞師匠がこのネタを演っている」
「はい」
「もう一つ因みに、わしの『名作落語大全集』が、前回と次回の2回にわたってこのネタを紹介」
「CMですね」
「まあとにかく、今日のわか馬はわしの聞いた中では上々の部類じゃな」
「最後は」
「麟太郎の『短命』。説明から納得への道筋がちょっとくどい部分を感じた。仕草が大きすぎるのも気にはなるが、まあ悪くはないじゃろう」
「はい、今日はこれまで」
「わしの台詞じゃ……ともかく前回といい、今回といい、多くのお客さんが来るのはいいことじゃが……どうも客層が悪くなったような……」
「でも、演者が悪い時はどうするんです」
「わしは何度かしかないが、演じ手に対して背中を向けることにしている」
「それもひどいね」
「はっきり邪魔になるようなことをするよりいいじゃろう」
「ううん……どうですかねえ」
「はい、本当に今日はこれまで」

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