9月21日 取手中央タウン寄席

「そういう訳で、今日は取手の中央タウン寄席
「はい、我が町で初めての会ですね」
「そう、我が家の玄関を出て、マンションじゃからエレベーターで下り、歩いて、全部合計3分以内」
「いいですね、毎日やりましょう」
「わしもそうしたいな……さて、今日はまずは三遊亭橘也、今月から二ツ目になったばかり」
「若手ですね」
「出し物は『転失気』。まあ、よく整っているストーリーじゃな。テンポも悪くはないし、張り切っているのがよく分かる。しかし、疑問も一つ」
「何です」
「どうして和尚が疑問を抱かないのか。小僧は『おつけの実にして食べちゃった』って笑うのに、和尚は思い出しもしない。この点だけがどうも……」
「どうすればいいんでしょうね」
「店の人がごまかす台詞は、他に『売れて月末にならないと入らない』『お土産に持たせてやった』『ネズミが棚から落として壊しちゃった』という3種類がある。その組み合わせで演るか……」
「そうでなければ」
「和尚に、『あの人、本当は知らなかったのじゃな』とでも言わせるか」
「それも一手ですか」
「それに、落ちが本来のもの。これはしばらく聞いた記憶がない。円楽党ではこれで演っているのじゃろうか」
「さあ」
「続いて三遊亭とん楽。『目黒の秋刀魚』だったが、くすぐりの入れ過ぎと感じたな」
「そうですか」
「途中で台詞が詰まることもあったし……というと悪いように聞こえるかも知れないが、殿様がかなり軽率なのじゃが、品位を落としていないのがいい」
「合格点ですか」
「出演者の名前を黒板に汚い字で書いてあった。町内に落語マニアがいて、寄席文字も書けるのに……って関係者に言っていた人がいるが……」
「そんな人がいるんですか」
「わしじゃ」
「あらら……その人、よく知っていましたね」
「落語通じゃろう。年に一回は雑誌に載っているからな」
「はいはい、それで、その黒板は」
「後で聞いたら、とん楽師匠の直筆だったそうじゃ。わしが言わなくてよかった」
「はい、ここでお仲入り」
「2時間の寄席で仲入りは要らないと思う。まあいいか……」
「はい、食いつきは」
太神楽鏡味仙次。全体に手際が悪い。それに緊張しているから、こちらがつらいな……このページで良く登場する仙花ちゃんの仲間らしい。また調査してみよう」
「もう一つですか」
「難しい技はさっとやめるし、傘は危なっかしくって……お手玉は悪くない……まあ、全体としては可というところかな」
「はい、いよいよトリですね」
山遊亭金太郎師匠。出し物は『出世豆腐』。『徂徠豆腐』ともいうが、落語では圓窓師匠が練り上げていた。2002年に人間国宝になったばかりの一龍斎貞水が講談で演じたのが思い出深い」
「それで、金太郎師匠は」
「今まで聞いた中で、もっとも説得力があった。豆腐屋の親切に、女房まで気を遣う。それに応える徂徠という人間関係がよく描かれているし、徂徠が空腹の時、おからをもらってから、出世して……という変化もよく描かれている」
「はい、そうなると、当然」
「いやあ、大満足の席ということになるじゃろうな」
「昨日と比べるとどうですか」
「それは失礼じゃ。昨日も素晴らしかったが、二ツ目の会。今日は2人も真打が来ている」
「はい」
「因みに今夜は金太郎師匠の地元、我孫子でとん楽他のメンバーで会を開いているが、わしはそちらまで行く元気はない」
「はい、そういうことで」
「無事我が町の寄席が終了致しました」

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