8月22日 お江戸日本橋亭

お江戸日本橋亭へ」
「寄席は今月初めてですね」
「『落語三昧』、柳太郎師匠の会じゃ」
「はい」
「前座は三遊亭小笑、このページではお馴染みになって来たかな」
「ええ……ああ、言葉が情けない調子の……」
「今日は『転失気』、4月に聞いているが、今日の出来は今一」
「ダメですか」
「まあ前座じゃから……これからじゃな」
「はい、続いてプログラムに出ている人ですね。春風亭鹿の子
「お久し振り……落ち着いた雰囲気になったなと思っていたが……その理由も納得」
「何です」
「子供が出来ていたのじゃ」
「あら」
「今日は『振り込め詐欺』という新作。1度すでに聞いている。社会問題をいくつか組み合わせた作品じゃ」
「出来は」
「上々かな……来年か翌年には真打か……」
「女性で真打はまだ少ないですね」
「女性ならではという作品も多い。わしの『喧嘩はおよし』を演じてもらおうと、交渉開始……」
「どうなりますかね」
「どうにかなりますよ」
「次は瀧川鯉朝
「今日の出し物は……ううん……まあ、知っている人は知っているから……」
「何です、はっきり言えない」
「『動物園』の改作。ここで書くと大変なことになるので……内緒」
「それはないでしょう」
「まあ、鯉朝師匠の作品は、とてもいいなという雰囲気の作品と、何だこれはという作品がある」
「この日の作品は」
「もちろん、後者……何だこれは……まあでも面白い」
「分かりませんね」
「詳しく書けないのが辛い」
「続いて瀧川鯉昇師匠」
「待ってましただね。『持参金』じゃが、やっぱりこの師匠の世界は……ううん、なんでこんなにおもろかしいのじゃろう」
「おもろかしいって……」
「ウン十年前の流行語、おもしろおかしいを詰めた言葉じゃ」
「この師匠は、何でも自分の世界にしてしまいますね」
「そこが魅力じゃな。とにかく堪能した」
「はい、仲入り後は春風亭柳太郎の1席目」
「今日は兄弟会じゃな。前座以外はみんな元々が柳昇師匠の弟子じゃ」
「あ、そうなんですか」
「そうなんですよ。さて、出し物は『野ざらし』。鯉昇師匠が自分の世界にしてしまうと言ったが、この柳太郎は古典的世界を大事にしているな。もちろん、自分の世界を作っているが」
鯉昇師匠と比べると落ちますか」
「まあ、それはそうじゃが……今作っている世界が、柳太郎ワールドになるとすごいことになるかも知れない。本格古典の世界を目の前に生み出して来るのじゃから……」
「今はまだ完成していない」
「そんな印象もある。しかし、本格になりそうな予感を感じさせるものを持っている……まあ、これからの成長を楽しみに」
「今日はよく分からないような説明が多い」
「はい、鏡味正二郎太神楽……これはいつものように、見事な手際。この寄席は天井が低いから、大変そうじゃ」
「そして、トリは柳太郎の2席目」
「『佃島』じゃ。これも先ほどと同じ、無駄なく無理なく、江戸の心意気を伝える。3両もの金を恵んで忘れている……単純計算すれば、3両は30万円にもなる。それをぱっと与えて忘れてしまうのじゃ」
「すごいですね」
「それが江戸の意気なのじゃな……それが無理なくこちらに受け入れられるから、上々の演出なのじゃろうな」
「はい」
「仲入後に2席は辛かったようじゃ。まあ、色々挑戦している柳太郎ならではの会。変わった噺や珍しい物もあったので満足して当然という会じゃな」

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