5月4日 有森博演奏会

「さて、今日は午前中で仕事を終えて、銀座へお散歩に」
「久し振りですね」
「まあ色々あって、手拭いの展示会などを見物、最後に有森博さんの演奏会へ」
「ええ、図はCDですね」
「5,6種類出しているはずじゃが……最新作をいただいた」
「曲は」
「図のジャケットは、露西亜秘曲集……『音楽の玉手箱』と題されている」
「なぜ漢字でしゃべっているんです」
「これはこのCDの副題なのじゃ」
「じゃあ仕方がありませんね」
「タイトルはもちろん、リャードフの作品、これも面白いなあ」
「そうですか」
「タイトルが『Music Box』なので直訳して『音楽箱』というのが一般的」
「『玉手箱』ってのがいい感じですね」
「まあ、今はみんな英語が分かるから、これは『オルゴール』のことなのじゃ」
「へえ」
「小説の『谷間の百合』と並ぶ珍訳だと思うが、それはいずれ……」
「はい」
「もう1枚、カバレフスキーのソナタ集じゃが、これにいただいたサインが傑作で……」
「どうなっているんです」
「ジャケットの文字と逆さに書かれている」
「あれ」
「書きやすいスペースを探したという雰囲気じゃな。あまり細かいことを気にしないのが、いかにも芸術家らしくて好きじゃ」
「そうですか」
「実は、今日もYシャツを忘れ、慌てて直前に買いに行ったという」
「それが芸術家ですか」
「そういうことじゃな」
「さて、演奏会は」
「そのカバレフスキーソナタがメイン。第3番がよく演奏される名曲ということになっているが、今日は第2番が実にドラマチックに展開し、感動的じゃった」
「へえ」
「どこがどう良かったと説明出来るなら、わしはプロの批評家になっておる」
「はいはい」
「アンコールにバッハの『G線上のアリア』、最初に紹介した露西亜秘曲集から……」
「え……バッハってドイツでしょ」
「そう、これをピアノ・ソロで演奏するように、ゴードスキーが編曲したものなのじゃ」
「なるほど」
「これもなかなかのドラマになっていた」
「無事演奏会が終了」
「そういう訳で、例によってCDにサインをさせ、記念写真」
「図々しさ満開ですね」
「はい、明日はやっとお休み」
「何をします」
「そうじゃな……残っている仕事でもしよう」
「全然休みじゃないじゃありませんか」

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