1月13日 上野広小路亭

「世間では3連休と言うが、わしは昨日は帰宅したのが夜9時だった」
「土曜日でもですか」
「風邪を引いてひどい状態だったから、今日は出勤したものの、どうも仕事にならないので早退」
「たまには仕方がありませんね」
「それで上野広小路亭へ」
「やっぱり」
「まあそんな訳でちょっと遅刻。前座は笑福亭羽光……かな……初めて見る人じゃ。上方言葉で『桃太郎』を演っていたから……多分……」
「いい加減だね」
「落ちになるまで後ろで待って、もちろん一番前へ……もう一人の前座は桂ち太郎。去年までは出演者から『ぼく』と呼ばれてからかわれていたのじゃが、随分大人っぽくなった」
「はい」
「芸もなかなか……『饅頭怖い』だが、落ち着きもあるし、食べる仕草も丁寧でよかった」
「これからプログラムに載っている人ですね。春風亭鯉枝
「いつものようにボソボソもそもその身の上話。出し物は『代演屋』、新作じゃな。誰かの代わりを演じるという珍商売。新人の最初の仕事が、結婚式で友人の代役。もっと割のいい仕事を求めると、ヤクの取引の代役という……全部同じようにボソボソ進むのが不思議な世界じゃな。人物がそういう人物だからいいのじゃが」
「続いて古今亭錦之輔
桂平治師匠が、女と会う約束があるってんで、先に登場。へえ、詰まらんものを持参しまして、へい……」
「私的に挨拶しないの」
「出し物は『時蕎麦』。皆さんおなじみ、CDで持っているが、本物はすごい。仕草がたっぷり入って、実にドラマチック……後のそば屋にわざとらしさを感じていたが、平治師匠だとそれがマンガ的で実におかしい。違和感なく笑えるのがすごい芸じゃな」
コントD51
「代演で一矢相撲漫談。本物の相撲も今日が初日だということで張り切っていた」
「はい。次は錦之輔ってことですか」
「順序を入れ替えた理由が分かった。代演で、何と桂夏丸君!」
「あら……予定外ですか」
「そう。まあ、たまたま買った土産があったので渡した。ゴメン……明後日、ろべえ君との勉強会があるが、わしは行けない。皆さんぜひ応援に行って下さい」
「はい。とにかく、これでろべえ君と夏丸君の高座を見ることが出来たということですね」
「そういうこと。出し物は『釣りの酒』。前に聞いているのじゃが、色々発見があった。マクラから平治師匠が女と逢いに行ったという話で客をつかみ、全体にいい雰囲気にしていった」
「落語はいかがでした」
「色々新しい台詞もあり、面白かった。とにかくどんどん良くなるなあ」
「次は三遊亭圓丸
「『壺算』じゃ。一般には店を出る客が『早く行け』と言い、それにもう一人が応対する。これが笑う場合と、その人も分からないという場合との二通りに別れるな。それが圓丸師匠は、これを店の主人の描写で見せた。わしにとっては実に新鮮じゃった」
「はい。東京太・ゆめ子
「おなじみの漫才じゃ。京太師匠がぼけてておかしかった」
「仲トリは春雨や雷蔵
「『山崎屋』じゃ。吉原の風習について話がなかったので、どうするのかと思ったら、結婚を決めるところまで。でも満足じゃ」
「ここでお仲入り」
「今日は超満員。3度もお膝送りがあった。中入り後も2度……すごかったな。百人も入ったんじゃないかな」
「さて、食いつきは神田松鯉
「『寛永三馬術』の『間垣平九郎』」
「あれ……」
「そう。7日にきらりで聞いた。しかし、さすがに松鯉先生……きらりちゃんは前半説明だけだったが、そこをさらりと説明して、平九郎のドラマを見事に描いていた。降りる場面まで見事じゃった」
「良かったということですね。続いて春風亭美由紀
三味線漫談と踊り。良かったなあ……へえ、土産は詰まらん物で……」
「私的に使わないの」
「とにかく、声が素晴らしい。これぞ音曲」
「はい、続いて三遊亭圓遊
「マクラで眼鏡を外して『花筏』。眼鏡を外したのは初めてじゃな。矛盾のない演出で面白かった」
橘ノ圓
「またドジったらしい。車を降りるのに足より先に顔が降りちゃったという……」
「大変ですね」
「まあ年末にカレンダーをいただいたのじゃが……土産抜きで済みません」
「また私的に……」
「出し物は『蛙茶番』。テンポよく無駄なく進む。メリハリの付け方がすごいなあ。堪能した……文字で書くとこの程度。本物を見る幸せは言葉では表せない」
「はい。翁家喜楽
「おなじみ太神楽。初めて見る人も多かったようで、客席ですごい歓声が上がった」
「さて、トリは三遊亭右紋
「おなじみの『婆ん家』じゃが、やっぱりいいものはいい。ともかく、80人で満員の席に百人は来たじゃろうというすごい入りで、大満足じゃ。2003年に平日じゃがお客さん3人ということもあったのが、もう完全に過去の世界じゃな」
「落語人気はすごいですね」
「まあ当時は、大満足ということはめったになかった。やはり客が入ると違うのじゃろうが、いい芸を見せればまた来ようと思う。やっとそれが形になっているということなのじゃ」
「はい。これが続くといいですね」

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