12月27日 お江戸日本橋亭

「さて、そんな訳で」
「どんな訳じゃ」
「……いつもとボケとツッコミが逆ですねえ」
「そういう訳で」
「どういう訳です」
「いつものパターンに戻っちゃった……27日、内田奈織ちゃんと心花(ここはな)の演奏会を終えて、いよいよ本日のメイン、お江戸日本橋亭へ」
奈織ちゃんはついでですか」
「向こうのページでは奈織ちゃんがメインだって書いておくから大丈夫」
「いい加減だね」
「前座は昔昔亭A太郎で『子ほめ』。45なら厄そこそこって教わって、すぐに5歳の子なら2つ3つというのに、後で40歳ならどう応対してよいか分からないという……この辺りは疑問じゃな……」
「はいはい、メルマガでもうすぐ『か』が終わりますから、『こ』へ行き着くまでにゆっくり研究してください」
「続いて笑福亭里光、今日お土産を持っていったのは彼だけ。真打昇進の時は祝儀が5万円だって念を押された」
「はいはい」
「出し物は『時うどん』、上方落語でも東京の『時そば』と同じ手順で演じる人もあるが、完全な上方の型じゃ。食べる仕草が素晴らしかった。拍手をする隙がないほど。昨年、大阪の天満天神繁盛亭で聞いた時も、食べる仕草のわざとらしさに引っかかっていたが、里光君のは納得がいった」
「長い説明」
「とにかく、上々の出来。今から貯金して、祝儀は用意する価値はあるかも……」
「『かも』ですか」
「さて、この日は橘ノ圓馬の2席。まずは『二番煎じ』、人物の描き分けが見事じゃ」
「いい出来だったということですね」
「あまり良すぎて、気持ちが良かったので寝てしまった」
「しょうがないね」
東京丸京平漫才。客席へのツッコミがおかしかった。外国人がいたので英語で話そうとするが、ひどい発音だったり……」
「他にもありました」
「わしの方をずっと見ていて、話が進まなくなった」
「どうしたんです」
「わしが飲んでいるビールが気になって、進めなくなったのじゃ」
「今度は向こうが、しょうがないね」
「まあでも客席も盛り上がったし、本人達も妙に乗り乗りになってよかったぞ」
「珍しくほめていますね」
「珍しく良かったということかな」
「また失礼な」
「仲トリは神田陽子の講談で『大高源吾、吾妻橋の出会い』。マクラでの雑談が妙な雰囲気で……」
「妙な高座が続きますね」
「本人がケタケタ笑ってばかりで……それから本筋のいい話に入るのに、何かにぐはぐだったのがおかしかった」
「まあ、これも上々だったということですね」
「そうじゃな。仲入り後の食いつきは昔昔亭柳太郎の『野ざらし』。この柳太郎も不思議なキャラじゃな」
「どういう風に」
「マクラで話しているのが、地でしゃべっているのか、教わったのを丸暗記で口にしているのか……さっぱり分からない」
「ネタはどうだったんです」
「マクラがそんな調子なのに、グングン盛り上がるのが不思議じゃな。畳みかけるようなギャグの連発で面白かった」
「さて、トリはもちろん」
圓馬の2席目で『百川』、もう30年も前に圓生を見た……テレビで……」
「注釈つきですね」
「わしの印象では、聞いている方も百兵衛さんと一緒にとまどっている雰囲気があった。それが、圓馬師匠のは最初から笑いっ放し。落語も日々進化しているのが分かるなあ」
「はい、これが今年最後の寄席、満足の出来ですか」
「いや……まだ終わらない」
「へ……だってトリが出て……」
「幕が閉まったが、追い出しの太鼓ではなく、三味線が鳴っている」
「ということは、続きがあるんですか」
「そうじゃ。しばらくすると幕が開いて、怪しいアナウンサーの柳太郎と、もっと怪しいチョンマゲ解説者の圓馬が現れ、『百川』の解説を始めた」
「あら……不思議な展開」
「TBS、『落語名人会』のパロディじゃな。かなり間抜けなくすぐりも入っておかしかった」
「おもしろい演出ですね」
「それで、そのチョンマゲ争奪のジャンケン大会が行われ、わしは圓馬の師匠である師匠のカレンダー2本のうち1本をゲットした」
「おみごと」
「こういう時は強いぞ」
「普段は悪人ほどジャンケンが強いって言ってましたね」
「まあ、そういう訳で、最後に三本締めをして、無事今年最後の寄席を終了いたしました。仕事が無ければ、古今亭圓菊の会に行って、菊之丞ちよりんを応援するところでございますが、本年はこれをもって打ち止めといたします」

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