12月9日 上野広小路亭

「さて、上野広小路亭では、年間に12回招待してくれる」
「大家さん図々しいから、ずいぶん通ったでしょう」
「それが、3月まで岡山にいて、こちらへ来てからどうも落ち着かず、やっと10月4日に初出勤」
「出勤じゃないでしょう」
「この9日、ようやく、今年6回目を達成」
「……3月で6回はすごいですね」
「土曜日が休みならいいのじゃがなあ。広小路亭は毎月15日までじゃから、来週の日曜日はやっていない。歌丸師匠、うらむよ」
「あらら……じゃあ、今年は最後」
「そうなるな」
「さあ、人生最後の寄席はいかがでした」
「人生じゃない! 最後になるのはこの寄席。今年あと3回は行くつもりじゃ」
「忙しいといいながら……」
「忙しいので、この日もちょっと遅刻」
「あら」
「前座はパス。『牛ほめ』だったが、聞いていないのだから異見も書けず」
「はい、じゃあプログラムに載っている人からですね。まず、春風亭笑松
「『小言幸兵衛』、七を『なな』というのが引っかかった。江戸言葉では『しち』、職人の場合は『ひち』という発音になる」
「細かいところにこだわっているね」
「まあ、出来は良かったぞ」
「続いて春風亭鹿の子
「今日の一番の目的。『オレオレ詐欺』、実は本当に警察の人が電話をしてきたのを、詐欺だと思って爺さんが大活躍。もちろん手土産を持参した」
「はい。ナイツ
漫才じゃな。お馴染み『SMAP』ものじゃが、前半のふくらみがあって笑えた。上々じゃな」
「それから神田ひまわり
「風邪で声が出なくなったとかで、春風亭昇之進の代演。リクエストで『善光寺由来』の一席」
「リクエスト落語ですか、珍しいですね」
「まあ滅多にないな」
「続いて三遊亭小圓右
「『湯屋番』じゃ。この人の演じる若者はいいな」
やなぎ南玉
曲独楽じゃが、先月から3度も見ることになった。縁が出来たのかも」
「仲トリは橘ノ圓
「『病院日記』、検査を受けに行ったりしたという漫談風な一席。この人はちゃんとした噺を聞きたいと思うが、こういう話も面白いな。いい演者は味があるということじゃ」
「はい。食いつきは桂歌若
「久しぶりに『四字熟語』。最初のテストの内容が最近のニュースになっていた。このところ話題になるニュースが多いからな」
「良かったってことですね。松乃家扇鶴
「お馴染みの三味線漫談じゃが、どうもわしは語尾が上がるのについていけない。なぜかこの日の客には大受けだった」
「はい。昔昔亭柳太郎」
「『尻餅』。かみさんの色気が不足しているようにも感じるが、だからこそ明るい笑いの世界に引き込んでくれた」
三笑亭夢太朗
「『うどん屋』、台詞回しなど、この人独特の世界じゃ。食べる仕草がいい……ううん、うどんを食いたくなるなあ」
「はい、ひでややすこ
「お馴染みの漫才。実は予定変更があって、手土産が余ったから、やすこ様に」
「余ったからですか」
「いえいえ……ま、その何でしてね……」
「トリは春風亭柳好
「『井戸の茶碗』。先月とん馬師匠のものを聞いたが、くずの買い取りなどに違いがあって面白かった。やはり人物がしっかり描かれるといい噺になる。素晴らしい出来じゃった」
「ううん……最近、素晴らしいばかりですね」
「そうじゃな。とにかく今日も満員。これなら満足してまた来ようという気にしてくれるじゃろう」
「はい、人生最後の寄席は大満足でございました」
「最後じゃないって……」

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