12月7日 桂才賀師匠講演

「今日は仕事で出張」
「またですか」
「先週から3回目。とにかく忙しいのよ」
「それで、今日のお仕事は」
桂才賀師匠の講演の裏方。もちろん、師匠のお世話係で……」
「あら……どうしてそんなことに」
「茨城県で、保護者のための会があって、わしが紹介した師匠が講演なさることになったという訳で」
「保護者の会と落語では結びつきませんね」
「だから採用されたという噂じゃ。とにかくそうなると裏方も買って出なければならないということになる訳で、会社も認めてくれて出張扱いにしてくれたという」
「いい会社でございますねえ……でも保護者会と落語の結びつきは」
「師匠は茨城農芸学院の面接委員をされている」
「農芸学院て……学校ですか」
「年に3人ほどは願書を取りに来る人がいるそうじゃ。国立で全寮制。授業料、寮費など、一切無料」
「へえ、入るのは大変でしょうね」
「大変じゃ……成績が悪くないと……」
「え……」
「少年院なのじゃ」
「早く言って下さいよ」
「その少年院慰問を千回行い、本を出された。すでに私の持っているサインシリーズで紹介しているが、今回、そこで得た子供の声などを紹介された」
「素晴らしい活動をされているんですね」
「そんな活動を紹介して、今回の講演となった訳じゃよ」
「なるほど」
「落語の枕のような話で、まず自分が噺家になった経緯からお話になり、少年院と関係が出来たきっかけを面白くお話になった」
「落語家さんらしいお話だったんでしょうね」
「それから、子供達の声。父親に甘えたかった、母親に話を聞いて欲しかった、先生に叱って欲しかった……」
「ううん、大事なことですねえ」
「それから人を殺した少年に、裁判長が、子供だから死刑ににはしないが、これから毎朝、毎晩さだまさしの『つぐない』を聞きなさいと諭したという……まあ、このネタは昨年わしも使わせてもらっているが……その曲を聴いていただくという……」
「色々変化にも富んでいるんですね」
「一般のお母様方が来られていたが、子供の声で胸が締め付けられ、さだまさしの歌に涙ぐんでいらっしゃった」
「はい、こんな大家さんですが、いいお仕事もしているんですね……たまには……」
「それで関係者がサインをもらってくれってんで……」
「大家さんは」
「わしは既に3枚もらっている」
「ああ、じゃあもらわなかった」
「いや、関係者が色紙をわしの分まで用意してくれていたので、折角じゃから……」
「なんだい……」
「まあ、そういう訳で本日はこれまで」


inserted by FC2 system