11月21日 お江戸日本橋亭(三遊亭遊史郎の会)

「さて、近所で風邪が流行って、わしもどうも調子が悪い」
「何とかは風邪をひかないって言いますがねえ」
「ナイーブなわしとしては、職場のみんなに風邪をうつしては申し訳ないと思って……それでお休みにして……」
「またですか」
「そういうわけでお江戸日本橋亭へ」
「はいはい」
「今日は遊史郎師匠の二席……ところが大変に面白い席になった」
「何が起こったんです」
「さて、開口一番は春風亭昇々
「大家さん、また人の話を聞いてないね」
「出し物は『やかん』……といっても前半で、『うなぎのかばやき』まで。テンポがもう一つじゃな。同じ言葉の繰り返しや言いよどみが多い。しかし、前座としては悪くはない。これから伸びるのじゃから、あまり出来上がっていてもなあ」
「はい。続いては」
「もう一人前座で三遊亭小笑、まだめくりがないし、『開口一番』でもないから、珍しいめくりなしじゃ」
「出し物は」
「『桃太郎』じゃ。元気な声が何よりじゃな。メリハリもあるから、まあよしというところ。こちらも段々上達するのじゃろう」
「はい、これからプログラムに載っている人ですね。神田きらり
「女流講談じゃ。寛永三馬術から『間垣平九郎』。舌っ足らずの女性講談が多い中、期待の星じゃな。かなり行けるかも知れない」
「続いて、三遊亭遊史郎の一席目」
「『六尺棒』。遊史郎師匠は、声が高いので、真打昇進の時も『笑点』で受けていた。まあ、それで子供や女は実にいい。それが、親子しか登場しない噺ということじゃ。しかし、親父の、つまり旦那の風格を感じさせる落ち着いたものになって来たな。これを認めたのは初めてじゃ」
「はい。上出来ということで、続いては仲トリの春風亭小柳枝
「『時蕎麦』じゃ。前半の男のテンポのよさ、蕎麦のうまそうな食べっぷり、実にいい。最後の汁を飲むところまで拍手の連続じゃった。そして、後の男の間の悪さ、実に見事なものじゃ」
「素晴らしい芸だったということで……食いつきは桂南なん
「それが、遅れて、コントD51が先に登場。いつものお婆さんコントだったが、その後生い立ちを語る漫才つき」
「あら、珍しいですね」
「これは南なん師匠が遅れているんだなとピンと来た」
「ああ……時間つなぎですか」
「それで引っ込んだので、南なん師匠かと思ったら、再びきらりが登場」
「あらら、二度目ですか」
「これも生い立ち、この世界に入った経緯などを話して、苦労話に涙ぐんだところで南なん師匠到着。踊り『梯子乗り』を披露して交代」
「色々やっていますね」
「まあ珍しい会になった」
「そこで桂南なんの登場ですね」
「すっかり忘れて家でくつろいでいたと告白、時間が押しているので『おねだり』を軽くやって踊り『落ちてるよ』」
「おかしな題名ですね」
「踊りもおかしい。まあ、これまた珍しいな」
「さて、そうしてトリは遊史郎の二席目」
「『寝床』をたっぷり。前の一席といい、旦那を意識した演目じゃな。やはり最後に出てくる子供はいいなあ」
「そういうわけでいろいろありましたが」
「珍しさも、芸の方も堪能した一席でございました」

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